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九月文楽「面売り」「鎌倉三代記」「伊勢音頭恋寝刃」

2015/09/15
九月国立劇場文楽公演昼の部です。夜の部と異なり、昼の部はバラエティに富む三演目。

「面売り」
文楽を見始めてまだ日が浅いのだが、複数演目を行う場合、最初の演目は前座のような演目を上演するものだと思っていた。だが、今回の「面売り」、前座とはとても言えない立派な舞台。

おしゃべりな案山子(吉田玉佳)は愛嬌がある。面売り娘(吉田勘彌)は天狗、ひょっとこ、おかめと次々と面をかぶり変え、雰囲気がどんどん変わる。竹本三輪大夫さん(面売り)豊竹睦大夫さん(案山子)のおかしものある語りも楽しかった。

「鎌倉三代記」
歌舞伎で見たことがある。魁春が時姫で、梅玉が三浦之助義村、幸四郎が佐々木高綱。あれはあれで面白かったのだが、三浦様が時姫に、「俺のことを好きなら父親を撃て」という展開がどうにも自分勝手に思えてしまい、なんじゃいこのストーリーは、と思ったのを覚えている。

しかし文楽では、「鎌倉三代記」歌舞伎で感じた理不尽さを感じなかった。まず、通しであったこと。また、義太夫の語りと人形の所作によって、時姫と三浦様の逡巡がより丁寧に描かれていたこと。さらに、佐々木高綱が、三浦様の首を撃ち取り時姫の父北条時政に近づくことを約束したことと、三浦様の母が自害し父を撃たねばならない時姫に義理を立てたことが分かりやすかったので、理不尽さが相殺されたように感じた。

全体を通して時姫(豊松清十郎)さんがピカピカしていた。可憐で健気でかわいかった。

「局使者の段」
豊竹希大夫さんの語り、年老いた三浦様の母上と、局や女房たちの声を語り分けようと努力しているのがよくわかる。年季の入った大夫さんたちだと、なぜか語り分けていることを感じなくなり、一人の大夫さんが人形ごとに別人格になるような気がするのだが、希大夫さんはまだそういう感じではなく、ある意味新鮮。

「米洗ひの段」
桐竹紋壽さんの女房おらちが最高でした。お姫育ちで家事が全然できない時姫にヤキモキして、井戸水の酌み方や米の研ぎ方を教えてやるのだが、「肩肌脱いで」って語ったと思ったら、片乳はだけさせて豪快に教えてやる。下町の肝っ玉豪快オッカサン。時姫がすり鉢でする際、女房たちが時姫を団扇で扇いでいるのを見て、「そんな暇あったらすり鉢もってやりなさいっ」と言っても埒が明かないので、自分で足を手前にでーんと投げ出してすりはじめた。かっこいい。

ちょいメモ備忘録201500914-02

「三浦之助母別れの段」
この段は何と言っても竹本津駒大夫さんの語りと鶴澤寛治さんの三味線。津駒大夫さん、いつもながら熱い。こちらも手に汗握る語り。年老いて余命いくばくもない自分の命運を知りつつも、必死で家を守ろうとする母。寛治さんの三味線も哀しみが誘う。人形遣いは桐竹勘壽さん。動きが少なくても母の想いが伝わる。

「高綱物語の段」
最後の段は足立藤三郎、実は佐々木高綱が良かった。吉田玉男さん。足立藤三郎のときは軽薄でいけ好かない、でもなんかしっくり来ないと感じたがそれは仮の姿だから。正体を現したあとは、地位ある武将らしく周囲を圧倒する威厳と立派さ。

こってりした文楽を堪能できる演目でした。

「伊勢音頭恋寝刃」
吉田簑助さんのお紺が本当にきれい。娘としての可愛さ、遊郭の女ならではの色気、惚れた福岡貢のために歯を食いしばっての愛想尽かしをする健気さ、そういうものを全部身にまとっていて美しかった。

桐竹勘十郎さんの万野、勘十郎さんって意地悪な万野を操るとき、ご自身の顔も万野みたいな顔になってしまっている気がする。ちょっとかわいい。吉田和夫さんの福岡貢、お紺に惚れたのに愛想尽かしをされ怒り狂う短気な若者らしさと、青江下坂を手にして気がふれる恐ろしさ。

ちょいメモ備忘録201500914-01

「古市油屋の段」
休演明けの咲大夫さん。今までで一番聞きほれてしまった。燕三さんの凛とした三味線と良い相性。

「奥庭十人斬りの段」
安定の豊竹咲甫大夫さんと野澤錦糸さん。首が飛びまくりだと思ったのに、あんまり飛んでなかった。意外とおとなしめ。カツサンドを食べたせいで睡魔が・・・。

文楽を初めて見た頃は義太夫に注目しがちだったのだが、最近は三味線にも目が行くようになった。この日の三味線、どれも腹と心に響いてずんと来て、聞きごたえあり。

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10:28 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)

九月文楽 「妹背山婦女庭訓」

2015/09/09
国立劇場九月文楽。昼の部と夜の部どちらに行くか迷ったが、「伊勢音頭恋寝刃」は首がバッタバッタと切られて楽しそうだし、夜の部の「妹背山婦女庭訓」の通し狂言も見てみたいし、悩んだ挙句両方行くことにした(笑)。
ちょいメモ備忘録201500908-02

とても楽しかった!「妹背山婦女庭訓」はこの四月に平成中村座で初めてみたが、やはり通しで見るとストーリーが良く分かって面白い。何より人形がとてもきれい!三人の主要人物、橘姫、求女(藤原淡海)、お三輪がみんなキラキラしている。

特にそれを実感したのが「道行恋苧環」。橘姫(吉田和生)、求女(吉田玉男)、お三輪(桐竹勘十郎)、お三方揃踏み。義太夫は橘姫(豊竹呂勢大夫)、求女(豊竹芳穂大夫)、お三輪(豊竹靖大夫)。三味線は鶴澤清治、鶴沢清志郎さんほか。

歌舞伎では踊り音痴の私はしょっちゅう睡魔と戦うことになるのだけれど、この文楽の道行では眠くなるどころか、夢中になって見た。五人の義太夫、五人の三味線が大迫力。求女は気品あふれる二枚目、でも優柔不断の二股男。染五郎と錦之助をたして2で割った感じ。橘姫は優雅なお姫様、でもとっても健気。芝雀さんみたい。橘姫が求女への思い入れたっぷりに舞い、それに翻弄される求女。そこに現れる桐竹勘十郎のお三輪ちゃん。娘らしさは菊之助、嫉妬深さは七之助、それに玉三郎の華やかさを合わせ持つ。求女のために一生懸命な姿がいじらしくて可愛くてたまんない。勘十郎さんすごい。道行だけもう一回見たい。

「井戸替えの段」、酒盛りの場面が超楽しい。みんなで歌って踊ってどんちゃん。足を開いて、柏原芳恵がやってた「ビタミンC」みたいなポーズをとったりして(←誰も分からん)。豊竹松香大夫さんのテンポ良い語り語り。

「杉酒屋の段」、豊竹咲甫大夫さんの若々しい語りが良かった。竹澤團七さんの腹に響く三味線がお気に入り。白の苧環、赤の苧環を足にひょいと掛けられた後、想い人を追っかけて行く場面展開が面白い。お三輪母(吉田文昇)さんがいかにも口うるさいオッカサン。

ちょいメモ備忘録201500908-01

「鱶七上使の段」、最初の豊竹咲寿大夫のちゃりがけみたいな語りが楽しい。高い声に合っている。鱶七は二世尾上松緑みたい。豪放磊落で槍に突き出されても動じない。文字久大夫の語りは鱶七の方が入鹿より似合う。入鹿はスケールのでかい悪玉なのに、おとなしめ。

「姫戻りの段」、さんざん優柔不断で翻弄したあげく、正体を知られたら橘姫を殺そうとして、あげくに入鹿の盗み取った宝剣を取り戻したら夫婦になろうとか、求女、ひどくない?そんな求女に従う橘姫、健気すぎる。

「金殿の段」、お三輪ちゃんがいじめられる段。いじめの場面は平成中村座で見ても気分良いものではなかったが、、文楽では歌舞伎ほど不快ではなかった。歌舞伎では立役が中心にいじめて笑いに昇華しているのだと思うが、文楽はそのまんま女によるいじめ。よりリアルなはずなのに不思議だ。人形だからリアルさが軽減されるのか。

いじめられた悔しさ、恥ずかしさ、橘姫への嫉妬から逆上したお三輪ちゃんの荒れ狂った様相がすごい。千歳大夫さん、感情の起伏がはっきりする場面が予想通りうまい。お三輪ちゃんの炎のような激情と一体となって盛り上がる、盛り上がる。千歳大夫さん、豊澤富助さんの繊細な三味線と良いコンビ。

「入鹿誅伐の段」、この段の入鹿(吉田玉輝、豊竹始大夫)はスケールが大きいいかにも悪の親玉。悪人だけどかっこいいぞ。鎌足(吉田文司、竹本津國大夫)、淡海(吉田玉男、竹本南都大夫)もみんなスケールが大きくて見応えあり。ラスト、入鹿の首が飛んで空中を舞いまくって、完。

ちょいメモ備忘録201500908-03

文楽、歌舞伎より常に完成度が高い気がする。その分歌舞伎の方が心配させられたりとか別の愛着もわくのでどちらが良いというのではないけれど。夜の部、楽しかったです。

11:57 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)

五月吉田玉男襲名披露「五條橋」「野崎村」「一谷嫰軍記」

2015/05/28
吉田玉女さん改め吉田玉男襲名披露、千穐楽。
ちょいメモ備忘録20150525-01

「五條橋」
牛若丸:豊竹睦大夫/弁慶:豊竹始大夫  竹本小住大夫、竹本文字栄大夫、野澤喜一郎、豊澤龍爾、鶴澤清公、鶴澤清允
(人形役割)牛若:桐竹紋富臣/弁慶:吉田勘市

10分ほどの短い演目。この短い演目で若手に活躍の場を与える趣向みたいだ。弁慶と牛若丸の出会いの場面ですよ。この出会いが後の勧進帳につながるのですよ、たぶん。

牛若丸、緑の着物で薄い桜色の布をふわふわさせながらの立ち居振る舞いが凛々しい。対する弁慶、紅白の鉢巻を締め肉体派。弁慶というより、アリババみたいだ。

五條橋の上での二人の戦い、思っていたものとちょっと違った。牛若丸がひらりひらりと軽やかに舞い、弁慶が右往左往する図を想像していたのだが、牛若丸、弁慶に傘でずーんと突く、何度も突く、続いてや扇子でも突く。これでいいのかよく分からないけど、楽しかった。
ちょいメモ備忘録20150525-02

「新版歌祭文」 野崎村の段
中 豊竹芳穂大夫、鶴澤清馗/前 豊竹呂勢大夫、鶴澤清治/奥 竹本津駒大夫、鶴澤寛治、ツレ鶴澤寛太郎
(人形役割)娘おみつ:吉田勘彌/手代小助:吉田文哉(17日まで)吉田蓑紫郎(18日から)/丁稚久松:吉田清五郎/親久作:吉田文司/下女およし:桐竹紋吉/娘お染:吉田一輔/駕籠屋:桐竹勘次郎/駕籠屋:吉田玉彦/母お勝:桐竹紋壽/船頭 桐竹紋秀

歌舞伎と展開は基本的に同じ。台詞も歌舞伎の台詞と相当一緒の模様。お光ちゃんが本物の大根を使うのも一緒。福助ほどに大量には切らないけど。髪を結う仕草がなんともいえず愛しげで可愛い。

お染を見つけたお光が視界を妨害する下りは派手だった。箒を使ったり、通せんぼしたり。こんなおぼこい娘が出家するという展開に説得力を持たせられるか、少々不安になった。 が、いざ見てみると、歌舞伎よりも納得できた。理由を考えたのだが、おそらくお染と久松の互いに気持ちを確認しあう場面に説得力があったからだと思う。あんなに惹かれあっている二人を見たら、自分が割り込む余地などない、とお光が思うのも致し方ない。綿帽子をかぶったお光はとても綺麗で、その分だけ悲しかった。

芳穂大夫さんのお光、手代小助がうまかった。老父久作はいまいち。逆に呂勢大夫さんは老父久作がうまかった。最後の津駒大夫さんがラストに向けドラマチックに盛り上げる。

野崎村は、最後の三味線と駕籠かきが楽しい。ココをきくために、野崎村を見ている気さえする。大満足でした。

ちょいメモ備忘録20150525-03

吉田玉女改め  二代目吉田玉男襲名披露 口上
文楽の口上ってどんなだろ、と興味しんしん。事前に並ぶ人の名前をプログラムで確認。吉田「玉」の一門が並んでいることに気づく。そして最前列には、三味線から鶴澤寛治さん、大夫から豊竹嶋大夫、竹本千歳大夫さん、人形遣いから、吉田和生さん、桐竹勘十郎さん、そして中央に吉田玉女改め吉田玉男さん。少しは文楽の人員構成が分かったかも。

千歳大夫さんの司会で進行。鶴澤寛治さんが、初代吉田玉男さんに、坊主頭だった二代目吉田玉男さんを指して「玉男さんの子?」と聞いたら、「近所の子」と答え、「いつまで続くやろ」と言ったとか。その坊主頭の男の子が今、初代の名を襲名しようとしている。まだ文楽の何たるかをまるで知らないのに、ちょっと感動してしまった。

最前列の方皆さん一言ずつ真面目なご挨拶。吉田和生さん、桐竹勘十郎さんは玉男さんと同時期入門なんだね。そして肝心の吉田玉女改め吉田玉男さんのご挨拶はない!それもいかにも文楽らしい。

ちょいメモ備忘録20150525-04

襲名披露狂言 「一谷嫰軍記」
熊谷桜の段 豊竹松香大夫、鶴澤清友
熊谷陣屋の段 切 豊竹咲大夫、鶴澤燕三、後 竹本文字久大夫、鶴澤清介
(人形役割)妻相模:吉田和生/堤軍次:吉田玉佳(17日まで)、吉田玉勢(18日から)/藤の局:桐竹勘十郎/梶原平次景高:吉田玉志(17日まで)、吉田幸助(18日から)/石屋弥陀六実は弥平兵衛宗清:吉田玉也/熊谷次郎直実:吉田玉女改め吉田玉男/源義経:吉田玉輝/百姓・奴・軍兵 大ぜい
望月太明藏社中

おこがましい言い方だが、吉田玉女改め吉田玉男さんが何年も何年も師匠の足、左を遣い芸道に精進し、師匠亡き後もさらに鍛錬を重ねた、その集積のような直実だった。立ち居振る舞いは武士らしく大きく、でも我が子を自分の手で殺めた悲しみを背負った悲しみが舞台全編を通してこれでもかと言わんばかりに伝わってくる直実だった。
ちょいメモ備忘録20150525-06

そして妻相模(吉田和生)、藤の局(桐竹勘十郎)との息がピッタリ。三人とも無駄な動きが一切なく、非常に洗練されている。交錯する直実、相模、藤の局の魂を見る思いだった。

「熊谷桜の段」の松香大夫さんの一人ひとりの語り分けが素晴らしく、さすが襲名披露と思わせる。「熊谷陣屋の段」、咲大夫さんの低音がとても良かった。そして、直実の慟哭そのものを表すかのような燕三さんの三味線。最後、清介さんの三味線に先導されるような文字久大夫さんの丁寧な語り。

ところで、熊谷陣屋の段、切で出演者の皆さんが舞台でスタンバイした瞬間に地震発生。しかし出演者の皆さんは動じない。清介さんが少し長めに三味線を弾き調整したみたい。そして特に相談をすることんなく、文字久大夫さんが余震のないことを判断し語りを開始。そのプロ根性を目の当たりにして動揺した観客も静寂を取り戻した。さすがです。

とても立派な襲名披露狂言でした。少しずつ文楽の楽しさが分かってきた。歌舞伎と連動して見るのが良さそう。

ちょいメモ備忘録20150525-05

23:17 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)

五月吉田玉男襲名披露「祇園祭礼信仰記」「桂川連理柵」

2015/05/22
五月国立劇場小劇場は、吉田玉女改め吉田玉男襲名披露公演。文楽の襲名披露ってどんなだろ、と切符入手。でも、この日は夜の部。夜の部は口上がないのです。
ちょいメモ備忘録20150519-01

ロビーは襲名披露公演らしく、いつもと違う賑わい。おめでたい雰囲気がただよう。この日は尾上右近が見に来たらしく、お花が。隣のお花は立川志の輔。
ちょいメモ備忘録20150519-02

「祇園祭礼信仰記」
「金閣寺の段」豊竹咲甫大夫、竹澤宗助
「爪先鼠の段」奥 竹本千歳大夫、豊澤富助/アト 豊竹希大夫(17日まで)、豊竹 靖大夫(18日から)、鶴澤清志郎
(人形役割)松永大膳:吉田玉志/松永鬼藤太:吉田玉勢/石原新五:吉田玉翔/乾丹蔵:吉田玉誉/川嶋忠治:吉田蓑次/雪姫:豊松清十郎/十河軍平実は加藤正清:吉田玉佳/此下東吉実は真柴久吉:吉田幸助/狩野之介直信:吉田簑一郎/慶寿院:桐竹亀次/腰元、近習、軍平:大ぜい

この演目、今年の一月に歌舞伎座公演で見た。松永大膳が染五郎、雪姫が七之助、此下東吉が勘九郎だった。七之助のおてんば雪姫が記憶に残る。

ちょいメモ備忘録20150519-05

さて文楽。歌舞伎と雰囲気が違う。こんな露骨に「絵を描くか、松永大膳に抱かれるか」という二者択一を迫ってたっけ。「抱かれる」という台詞が何回も出てきて、なんだかなあ、と。現代の価値観を芸能にあてはめるのはアホと分かっていても、松永大膳の傲慢不遜な態度と全体に漂う男性優位の価値観がどうも苦手で。

それでも文楽は楽しかった。「金閣寺の段」は碁笥(碁石を入れる器)等、碁をめぐるやり取りが面白い。松永大膳の偉ぶった振る舞いは生き生きとしており、かわいそうな雪姫は綺麗だけど痛々しい。咲甫大夫さんの元気が出る若々しいお声。

「爪先鼠の段」の見所はネズミ!雪姫の足元で桜がパッと舞ってネズミ・ピョンピョン。かわいい。縛られた雪姫、負けるな!そこに真柴久吉が登場。真っ白い着物を着た久吉、いかにもスーパー・ヒーローの出で立ち。「舞台のセリを使って一層から二層、三層へと上がって」行った(@国立劇場HP)。今回復活した装置だそうだが、なかなか大がかり。お城の一層がセリで下がり、二層が見え、次に二層が下がり、三層が見えるダイナミックな仕掛け。歌舞伎と違い人間でなく人形が上の層へ上がるように見えれば良いのだから、派手な仕掛けが作りやすいのかも。

そして千歳大夫さん。この方、お顔からしていかにも私好みの義太夫を語ってくれそうな方。実際わりと好みです。緩急がきっちりしていて聞きやすい。おだやかな富助さんの三味線とよく合っている。

加藤正清も登場し、久吉と大膳が戦う約束をして幕。

ちょいメモ備忘録20150519-03

「桂川連理柵」
「六角堂の段」 お絹:竹本三輪大夫/長吉:豊竹睦大夫/儀兵衛:竹本津國大夫  竹澤 團吾
「帯屋の段」 切 豊竹嶋大夫、野澤錦糸 /奥 豊竹英大夫、竹澤團七
「道行朧の桂川」 お半:豊竹呂勢大夫/長右衛門:豊竹咲甫大夫 竹本南都大夫、豊竹咲寿大夫、豊竹亘大夫、鶴澤藤蔵、鶴澤清丈' 、鶴澤寛太郎、野澤錦吾、鶴澤燕二郎
(人形役割)女房お絹:吉田和生/弟儀兵衛:吉田簑二郎/丁稚長吉(六角堂)吉田一輔(17日まで)、吉田簑紫郎(18日から)/母おとせ:吉田文昇/親繁齋:桐竹勘壽/帯屋長右衛門:吉田玉女改め吉田玉男/丁稚長吉(帯屋):吉田蓑助/娘お半:桐竹勘十郎/下男:大ぜい
囃子 望月太明蔵社中

「六角堂の段」
紫の頭巾をかぶったお絹さん(吉田和生)、とても綺麗。仕草一つ一つが柔らかくて、優しそうで、こんな人を長右衛門は裏切ってしまったのか、と思う。長吉(吉田蓑助)は名刀をすり替えるくらいだから、どれだけ悪党なんだと思ったらまだまだ子供。三輪大夫さんのお絹の柔らかいお声に聞き惚れた。

「帯屋の段」
いよいよ吉田玉女改め吉田玉男さん登場。今回はあまり動きのない長右衛門の人形遣い。動きがない中、お半(桐竹勘十郎)との事、金百両の使い込み等どんどん追い込まれていく責め苦を表すお役。筋書を読んだときはこの長右衛門が優柔不断野郎に思えて許せなかったのだけど、実際に文楽を見たら優しすぎるゆえの優柔不断なのだな、と思えた。

義太夫は、嶋大夫さんがとにかく圧巻。野澤錦糸さんの三味線の音色はどこか物悲しく、お二人の義太夫に大満足。

長吉とお半が恋仲であるはずがないと言い立てる儀兵衛(吉田簑二郎)と長吉のやり取りが面白すぎ。儀兵衛は全身使って囃し立て、長吉は少し抜けた若者で、動じない。ここは見せ場。長右衛門の義母のいじわるおとせ(吉田文昇)のいじめはとても憎らしく、父繁齋(桐竹勘壽)は、引退し一歩引いて成り行きを見守る。女房お絹の優しさ、お半の若さの間で右往左往する長右衛門。織り成す人間模様がとても切ない。

「道行朧の桂川」
心中するっていうのに、派手。それが文楽というのもらしい。義太夫も三味線も五人ずつだもの。

まだ十四歳のお半(桐竹勘十郎)、年上の男性を惑わす魔女のような天使のような。邪気がなく、その分罪深い。自分ひとりで死ぬつもりであると言いながら、結局長右衛門(吉田玉男)を翻弄する。お半のあまりの美しさゆえに、死へと誘われる長右衛門。事前に筋を読んだときは、長右衛門の情けなさばかりが目だったのに、道行では翻弄される長右衛門が哀れで切ない。

ちょいメモ備忘録20150519-04

心中もの、好きかも 笑。三味線がじゃんじゃんかき鳴らされるのが気持ちいい。次は昼の部だ。口上楽しみ。

00:22 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)

二月文楽「二人禿」「源平布引滝」

2015/03/02
偶然にも切符が手に入り、二月文楽公演の千秋楽へ。公演日は三月ですが。

「二人禿」
大夫 豊竹睦大夫、豊竹芳穂大夫、竹本小住大夫、豊竹亘大夫/三味線 竹澤團吾、鶴澤清𠀋、鶴澤燕二郎、鶴澤清允/人形 禿(桐竹紋臣、吉田蓑紫郎)

10分程度の短い演目。二人の禿は赤い着物で元気いっぱい。元気が良すぎて、羽根突きはまるでテニスをしているみたい。途中顔を向こうに向けつーんとするポーズはまるで「女暫」。短く切りそろえた髪が子供らしくてかわいい。

「源平布引滝」 
矢橋の段 豊竹咲寿大夫/豊澤龍爾
竹生島遊覧の段 実盛:竹本津國大夫、小まん:竹本南都大夫、左衛門:竹本文字栄大夫、忠太:豊竹亘大夫、宗盛:豊竹始大夫/鶴澤清馗 
九郎助内の段(中)豊竹靖大夫、(次)豊竹松香大夫、(切)豊竹咲大夫、(後)竹本文字久大夫/(中)鶴澤清𠀋、(次)鶴澤清友、(切)鶴澤燕三、(後)鶴澤藤蔵/小まん=桐竹紋壽、実盛=桐竹勘十郎、九郎助=吉田文司、葵御前:吉田蓑二郎、太郎吉:吉田玉翔、瀬尾:吉田玉也 九郎助女房:吉田文昇外

ちょいメモ備忘録201503-2-01

歌舞伎で義賢最期と実盛物語を見たことがあり、文楽版がみられると楽しみにしていた。特に小まんちゃん!壱太郎、梅枝の演じた小まんが好印象のせいか、小まんちゃん大好きなのです。今回も、人をビュンビュン豪快に投げ飛ばすわ、白旗を守るべく琵琶湖をグングン泳ぐわ、正に命がけのヒロイン。かっこよすぎ。実盛に腕を切り落とされ水の中腕がプカプカ浮いて流れていくのがなんともシュール。

後半、堂々とした風格ある実盛に、怒ったときの声と動きが迫力の瀬尾十郎(怒鳴るとこちらもびくっとする)、小まんちゃんの優しいお父さん母さんに、小まんお母さんを慕う気持ちが泣かせるせがれ太郎吉。一人ひとりどの場面でも生き生きとしていて、見ているこちらも元気になれる。

ちょいメモ備忘録201503-2-02

お馬さんが出てきたり、実盛が遠くから紐(?)を投げて敵の首に巻きつけたり、人形ならではのアクロバットさも全開。文楽はあくまで人形劇であり、難しいことは考えず、人形劇を楽しむつもりで見ればいいという気がした。ただ何百年という歳月を経て非常に緻密に組み立てられいる人形劇であり、その精巧さには毎度驚嘆するけど。

座席は前から4列目だったので、浄瑠璃も一言一句聞けた。意味の分からない文句があるときだけ字幕をみて、こういう言葉もあるんだと感心したり。歌舞伎はどうしても役者が主だが、文楽は浄瑠璃主体に組み立てられており、より浄瑠璃をじっくりと聞けるのがイイ。

行ってよかった。2月は二部に「天網島時雨炬燵」(心中天網島)、三部に「国性爺合戦」もやっていたみたいで、行けばよかったと後悔。五月の吉田玉女さんが二代目吉田玉男になる襲名披露には行きたいなあ。

11:57 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)
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