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「俺が噂の左團次だ」 市川 左團次

2015/07/30
首をはねられ、殺される。憎い敵役にも、芸がある。不良少年から歌舞伎役者になったという「噂の男」市川左団次の衝撃的人生(「BOOK」データベースより)。

俺が噂の左団次だ

ふざけた語り口調だけど、よく読むと役の作り方、化粧、踊り、台詞の覚え方等についてちゃんと書いてある。歌舞伎役者の日常も面白かった。若かりし頃、神楽坂の毘沙門天あたりで起こした傷害で留置場に三日間放り込まれ地検に送られたなどの武勇伝(?)も。

左團次さん、市村羽左衛門に芝居をよく教えてもらっていたらしい。あと、十七代目中村勘三郎に可愛がられたエピソード。小学生の頃の初代尾上辰之助、当代彦三郎、当代菊五郎、当代左團次の海水浴の集合写真がかわいすぎ。先月の「夕顔棚」で「じいさんばあさん」みたいだった菊五郎さん、左團次さんは、こんな幼いころから一緒に時を重ねていることに改めて驚愕。

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11:41 歌舞伎本 | コメント(0) | トラックバック(0)

七月歌舞伎座「熊谷陣屋」「牡丹燈籠」

2015/07/27
歌舞伎座夜の部。海老蔵「熊谷陣屋」の初役と玉三郎の牡丹燈籠がお楽しみ。

一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋
熊谷直実:海老蔵/白毫弥陀六:左團次/相模:芝雀堤軍次:九團次/亀井六郎:巳之助/片岡八郎:種之助/伊勢三郎:廣松/駿河次郎:梅丸/梶原平次景高:市蔵/藤の方:魁春/源義経:梅玉

吉右衛門先生が指導したとされる海老蔵の熊谷直実、初役。今後の期待がもてる良い直実でした。

プロの役者にこういう言葉を使うのは良くないと思うし、また、なぜか海老蔵に対してはこの言葉で評価しがちなのだが、海老蔵、「一生懸命」やってました。子を思う直実の心根を、全編を通して観客に伝えようとしているのがよく分かった。特に義経に首を差し出す場面。直実を演じるには、断腸の思いで子を身代りにする悲痛な思いや、直実が感じる無常感を表すことが何より重要だと思うが、それがしっかり感じられた。吉右衛門ほど馴染んではいないが、その分リアルさがあった。私的にそれだけで及第点だ。

舞台写真を事前にみて、直実の化粧があまり海老蔵に似合っていないと思ったが、どうしてどうして、立派な顔でした。制札の見得の絵になること!あのおっきい目が十分に生かされ、忠義と子への思いの間で苦しむ直実のハラが伝わる見得でした。頭を剃った僧侶姿も、出家した者の凄みと諦念が滲み出ていた。ヨーデル口跡も今回はそんなには気にならず。でも、これで口跡が良ければもっともっと素晴らしい直実になるのは確実。是非、父團十郎さんが住大夫さんに教わったように、義太夫の先生について一から習ってほしい。

ぼろくそ言うこともあるけど、やっぱり海老蔵は目が離せない。ときどきやらかしてくれる。

相模(芝雀)、一歩距離を置きつつしっかり息子を見守る厳しい母親像がよかった。義太夫に合わせた所作が、上から目線だがどんどん上手くなっている気がする。襲名は役者を変えていく。藤の方(魁春)さん、言うことなし。指の先から足の先まで全身が義太夫と連なっているようで素晴らしい。安定の白毫弥陀六(左團次)、運命に耐え必死に生き抜こうとする強さ。源義経(梅玉)、威厳と風格とともに、身分の高い者が併せもつ孤独感を表現。

吉右衛門先生、今月は菊之助に国立劇場の「義経千本桜」で碇知盛も指導したとのこと。菊之助の方が完成度は高いが海老蔵への期待値も高い。今後の歌舞伎界の明るい展望を感じさせる七月でした。

ちょいメモ備忘録20150726-01

二、通し狂言 怪談 牡丹燈籠 
第一幕 大川の船、高座、新三郎の家、伴蔵の住居、高座、伴蔵の住居、萩原家の裏手、新三郎の家
第二幕 高座、関口屋の店、笹屋二階座敷、元の関口屋夜更け
〈第一幕〉お峰:玉三郎/伴蔵:中車/お米:吉弥/お六:歌女之丞/萩原新三郎:九團次/山本志丈:市蔵/三遊亭円朝:猿之助 〈第二幕〉お峰:玉三郎/馬子久蔵:海老蔵/お国:春猿/定吉:弘太郎/お六:歌女之丞/三遊亭円朝:猿之助/伴蔵:中車

初見です。「牡丹燈籠」という演目名から身の毛もよだつ怪談話かと思いきや、幽霊はおかしみやお峰、伴蔵の夫婦の関係性を表現するために用いられているみたい。この玉三郎と中車の夫婦役、初めて見る組み合わせだけど、なかなか良いコンビでした。玉三郎(お峰)、ざっかけないけど、それなりに旦那様のことを大切にしつつ、日々の生活費をやりくりして内職に励む奥さん。伴蔵(中車)、ときどきボケたりもする愛嬌のある、小市民的に日々真面目に暮らす旦那。この二人が片寄せあって生きる様が垣間見れる第一幕。お金が入ってから羽目を外してしまった伴蔵を愛しく思うからこそ苦しむお峰の嘆きが切ない第二幕。自分自身の夫婦像と比べてみる部分もあったりして、一緒に泣き笑いできるお芝居でした。

花魁等綺麗どころのイメージの強い玉三郎だけど、年増の中年女性という役では独特の愛嬌と悲哀を醸し出し、それでいて可愛くもあり、チャーミング。あと、「伊勢音頭恋寝刃」の万野でも思ったが、うちわの扇ぎ方がいい。今回のお峰でもひと扇ぎする度に、うちわの扇から夫伴蔵への不満、嫉妬、愛情などの感情が放たれていくみたい。

中車はさすがの台詞回し。歌舞伎らしさも加わった歯切れの良い口跡。緊迫した台詞のやりとりでは、玉三郎をリードした側面もあったのでは。幽霊を怖がる所作は凝り性の中車らしい工夫もみせてくれて楽しめたし、何よりごく普通の小市民伴蔵という役どころで愛嬌をきっちり見せてくれたのが良かった。

お露(坂東玉朗)、10代・20代の頃の玉三郎はこんな感じだったのかと思わせる可憐さ。お米(吉弥)、両手の伸ばし方が幽霊そのもの。背筋を凍らせる台詞回し。萩原新三郎(九團次)、女に翻弄される二枚目を好演。馬子久蔵(海老蔵)、アイドルにお笑いの恰好をさせ恥ずかしがる様を楽しむバラエティ番組を思い出した。三遊亭円朝(猿之助)、一癖も二癖もありそうな咄家。話の内容が少しわかりづらかったが、噺家らしい姿勢や話し方を研究したことが見てとれる。お国(春猿)、この上なく色っぽい。

ラスト、お峰と伴蔵が再び片寄せあって仲睦まじく暮らす様を見たかったのに、お峰が死んじゃったのが悲しかった。それなのになぜか、あったかい気持ちになれました。

ちょいメモ備忘録20150726-02

17:53 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)

「松田聖子と中森明菜」 中川右介

2015/07/25
アイドルを自覚して演じ、虚構の世界を謳歌する松田聖子。生身の人間として、唯一無二のアーティストとしてすべてをさらす中森明菜。相反する思想と戦略をもった二人の歌姫は、八〇年代消費社会で圧倒的な支持を得た。商業主義をシビアに貫くレコード会社や芸能プロ、辛気臭い日本歌謡界の転覆を謀る作詞家や作曲家…背後で蠢く野望と欲望をかいくぐり、二人はいかに生き延びたのか?歌番組の全盛時代を駆け抜けたアイドル歌手の、闘争と革命のドラマ(「BOOK」データベースより)。

松田聖子と中森明菜

山口百恵、松田聖子の分析は初見のものも多く、面白い。中森明菜に関しては、筆者が参考にした文献をほとんど私自身読み込んでいるので、ふーん、という程度。三人それぞれの歌手としての姿勢、歌ってきた曲の違いが面白い。

22:00 芸能(歌舞伎以外) | コメント(0) | トラックバック(0)

親子で楽しむ歌舞伎鑑賞教室 「義経千本桜」

2015/07/22
菊之助が「義経千本桜」で碇知盛!これを機にどんどん立ち役へ転向するのでは、という不安はあれど、知盛と菊之助がどう対峙するか見ておきたいという期待を胸に、切符発売日にネット接続。そうしたらほとんどチケットが残っていない。みんな思うことは同じです。無事に切符を手に入れ安堵。7月22日(火)、「親子で楽しむ歌舞伎鑑賞教室」。

ちょいメモ備忘録20150721-01

小学生の群れ!群れ!群れ!観客の総人数はいつもと変わらないはずなのに、子供の迫力ってのはすごい。いつもの倍、混雑しているように見えた。始まるまでは賑やかだけど、いざ芝居が始まると案外静かに見ていて感心だ。うるさいなと視線を送ると大人だったりする。

まず、萬太郎の解説による「歌舞伎のみかた」。内容はオーソドックス。せり、楽器、型、「義経千本桜」の内容説明など。萬太郎の体操のお兄さんのような歯切れの良い解説は、お子様たちにも親しみやすく、分かりやすかったと思う。太鼓を叩いて「これは何の音でしょう、自然現象ですよ」で子供たちが「太鼓!」「太鼓!」と答えていたのが可愛かった。あと、「揚幕の方からチャリンと音がしたら、みんな花道の方を見ましょう」と説明したら、本番でチャリンと同時に、お子様たちが異常な反射神経ですぐ花道の方を見ていたのが、2階から見ていて面白かった。

ちょいメモ備忘録20150721-02

義経千本桜
菊之助と役柄が非常にしっくりきていたのがある意味ショック。「渡海屋」の銀平として、船問屋の主人らしく悠然と相模五郎らをやりこめる。荒くれ者相手に商売をするだけの冷酷さと凄みがある。他方、碇知盛の正体を現し白の狩衣で登場、平家一門としての品位が十二分にありながら、義経への怨念、平家復興の野望を強く感じさせる。ひとさし舞う姿には、その志に一点の曇りもないことを伺わせる。

「大物浦」で血まみれで登場する知盛。化粧がすごい。特に目。目の周囲を紅く塗り、さらに黒で囲むこの化粧、怖かった。見目麗しい菊ちゃんの面影はどこにもない。この化粧で、恨みを晴らさんと義経に詰め寄る知盛の姿には鬼気迫るものがある。最後、碇を持ち上げ入水する断末魔の表情は初役だからこそのリアルさがあった。

典侍の局(梅枝)のは折り目正しく品がある。でも、お柳には見えなかったな。お柳は生活感あふれる芝雀さんのイメージが強いのだが、梅枝はお柳を演じていても安徳天皇を守る乳母に見えた。義経(萬太郎)、義経の風格を顕すべく、一言一句神経をとがらせ台詞を伝えているのが分かる。ただ、いかんせん童顔。梅枝と萬太郎、梅枝の方が背が高いのに、梅枝が女形、萬太郎が立役なのか。

相模五郎(亀三郎)、渡海屋へ踏み込むときのおかしみのある芝居も、御注進で再登場したときの傷を負った芝居で雰囲気を変える芝居もよかったです。入江丹蔵(尾上右近)、傷を負った芝居の方は前後不覚によろめく所作等、色気も残し、さすがと思わせる。踊りがうまいからか。ただ、渡海屋での相模五郎とのやり取りの台詞の間がいまいち。魚づくしの場面が今一つ盛り上がりに欠けるのは相模五郎でなく入江丹蔵のせい。

ちょいメモ備忘録20150721-03

これまで見た幸四郎と吉右衛門の知盛と異なり公家らしい気品あふれる知盛だった。たぶん「菊五郎の色気」で菊五郎がやりたがっていた知盛に近い。菊之助はこれからも碇知盛をきっと演じるだろう。そう思えるだけの仕上がりだった。ただ、私は菊ちゃんの女形の踊りが大好きだし、今まで菊之助が演じた役で一番好きなのは「摂州合邦辻」の玉手御前だし、やはり少々複雑。完全転向しないことを祈らずにいられない。

12:45 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)

「あやつられ文楽鑑賞 」 三浦 しをん

2015/07/21
あなたは、人形浄瑠璃・文楽を知っていますか?え、知らない?大丈夫、ぜったい退屈しない仕掛けが満載!ほお、ご存じですか。でもちょっと待った。あなたの知らなかったことが、こっそりと書かれています。―若き直木賞作家が、いかにして“文楽くん”に恋をし、はまっていったのか。文楽の真髄に迫るべく資料を読み、落語を聞き、突撃インタビューを敢行する愛と笑いに溢れたエッセイ。小説『仏果を得ず』と合わせて読むと、おもしろさ10倍増(「BOOK」データベースより)。

あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫)

乙女ちっく(古)な文体が苦手で読んでいてしんどい。が、文楽初心者が知りたい知識をたくさん得られたのは収穫。

11:00 芸能(歌舞伎以外) | コメント(0) | トラックバック(0)
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