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九月秀山祭大歌舞伎 通し狂言 「伽羅先代萩」

2015/09/28
九月歌舞伎座、夜の部千穐楽。「先代萩」の通し狂言です。昨年藤十郎さんの国立劇場座頭公演で同じ演目を見たばかり。まだ記憶に新しく、いろいろ比較してしまう。

ちょいメモ備忘録201500926-01

通し狂言 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
花水橋/竹の間/御殿/床下/対決/刃傷

ちょいメモ備忘録201500926-02

〈花水橋〉  
足利頼兼:梅玉/絹川谷蔵:又五郎

足利頼兼(梅玉)、かっこいい。梅玉さん、柔らかで、しなやかで、気品と色気を兼ね備えた二枚目。梅玉さんの頼兼は国立でもみたけど、今回もよかった。絹川谷蔵(又五郎)に危険だから唄を唄わないよう注意され従うところが素直で可愛い。それでいて、ちょっとの事では動じない。谷蔵が斬るのを躊躇すると、「斬ってしまえ」と余裕しゃくしゃく。

絹川谷蔵(又五郎)、迫力ある立ち回りで、きっちりした荒事をしっかり見せてくれる。又五郎さん、お相撲さん役が似合いすぎでしょう。

ちょいメモ備忘録201500926-03

〈竹の間〉       
乳人政岡:玉三郎/沖の井:菊之助/鳶の嘉藤太:吉之助/小槙:児太郎/八汐:歌六

乳人政岡の玉三郎さん、登場です。でもこの場は他の女性陣が印象に残った。

沖の井(菊之助)。国立の孝太郎の沖の井は理知的で、ともすれば相手の裏をかく一面がありそう。これに対して菊之助の沖の井は、同じく理知的なんだけど、遠山の金さんのように公明正大。正義感に溢れていて、この人に嘘やごまかしは通用しない。孝太郎の沖の井の方が、八汐のコミカルな面は際立つ。これは好みの問題かな。どっちもイイ。嘉藤太の腹に一発かませる沖の井、かっこよすぎ。

八汐(歌六)、これぞ八汐。見る前から良いのは分かっていたんだけど、やっぱり良かった。八汐は怖いキャラというイメージがあるのだが、歌六さんの八汐は怖くない。でも、政岡(玉三郎)、沖の井(菊之助)と 対峙する程度に大物感がある。他方、主君とはいえ、まだ子供の鶴千代に媚を売り、やり込められてしまう小物感もある。そのへんのキャラが良い塩梅。小槙(児太郎)、医者の妻設定だが、医者並みに医事に通じてそう。児太郎、こういう雰囲気も出せるのだ。見るたびに新しい一面を見せてくれて驚かされる。鳶の嘉藤太(吉之助)、女性陣の問い詰めに応じるときの口跡は、これぞ歌舞伎の口跡。聞き惚れた。あと、子役さんが素晴らしかった。鶴千代君、本当に将来立派な君主になるだろうと思ったもの。大物。八汐がやり込められる場面、すごい説得力。

「竹の間」は嘉藤太と鶴千代千松」以外女性ばかり。一人一人の着物が豪華絢爛。

〈御殿〉     
乳人政岡:玉三郎/沖の井:菊之助/小槙:児太郎/栄御前:吉弥/八汐:歌六

ちょいメモ備忘録201500926-04

玉三郎の政岡は、藤十郎みたいに母性全開の政岡とは違う。母親というより一人の女性。だけど、孤独と戦う女戦士。普通の女性が乳母の役割を全うする哀れさを感じた。

「まま炊き」の場面はたぶん初見。今回見るまでは、千松が身代りになることを唐突に感じたが、常日頃鶴千代の身代りになるよう言い聞かせられていることが分かり、納得できた。子供らにごはんの準備をしてやる政岡、その間ずっとお腹を空かせている子供たちの様子が結構長く続く。動きもあまりなく浄瑠璃の語りを聴き続ける場面。でも退屈しなかった。政岡が我が子千松を愛しく思っていること、その千松に毒見をさせ危険にさらす闘いの日々を送っていること、それでも子供と二人といる日常は、それなりに安堵する日々であることが分かり、その日常を愛しく感じた。そして義太夫をいつまでも聴いていたかった。

身代りになり菓子を食べ、八汐に斬られた千松の「あー、あー」という高い声が耳から離れない。その後、政岡以外全員がいなくなるまで広い舞台中央に放置される。すぐにでも政岡は駆け寄り抱いてやりたいだろうに、栄御前を意識してか、それもできない。氷の鎧を身にまとい、必死で自分を抑える母の辛さ。

栄御前(吉弥)、八汐よりよっぽど悪辣。扇子で我が子を切り殺される政岡の様子をチラ見する様子が、冷徹で怖かった。

「御殿」、玉三郎さんが、とても丁寧に乳母としての運命に翻弄される母を演じており、良かった。時代物の女性という感じではない。でも、普通の女性として共感できる政岡だった。

〈床下〉         
仁木弾正:吉右衛門/荒獅子男之助:松緑

ちょいメモ備忘録201500926-05

お待ちかね、仁木弾正(吉右衛門)。悪役の威厳十二分、そして妖術使いらしいおどろおどろしさもあり。そして、ちゃんと雲の上をふわふわ歩いているように見えた!3階席だから途中で見切れたけど、その後花道正面にでっかい仁木弾正の影がゆうらりと映り、ふわふわ。照明の効果がすごい。

荒獅子男之助(松緑)、表情もお化粧もすごい迫力。松緑は派手な隈取が似合うなあ。台詞も短いけど、怒気に満ちている。バッチリでした。

〈対決・刃傷〉  
仁木弾正:吉右衛門/細川勝元::染五郎/渡辺民部:歌昇/山中鹿之介:種之助/大江鬼貫:由次郎/山名宗全:友右衛門/渡辺外記左衛門:歌六

「対決」 ―今一つだった。

仁木弾正(吉右衛門)がずっと低い声なのだが、抑揚がなくどうにも盛り上がらない。悪役感を出すためだと思うのだが、あまり功を奏していない。低音が苦手なのか。貫録はあったけど。国立でみた橋之助の仁木弾正からは、ものすごい色気を感じ、ハンコ(印形というらしい)を押す目線にドギマギしたのだが、その場面も普通に終わった。吉右衛門はこういう悪役の雰囲気作りは苦手で、忠義に厚いお侍とか、親孝行の息子とか、人の好い爺さんとかの方が、向いているのかもしれない。もしくは橋之助のイメージが強いだけで、こういう仁木弾正もありなのかもしれない。が、とにかく今一つしっくりこなかった。

さて、対決相手は細川勝元(染五郎)なのだが、仁木弾正の低い声に対立するかのように、花道から何を言っているか聞き取れないくらいの甲高い声で登場したとき、嫌な予感がした。梅玉さんの国立での勝元のイメージに引きずられているのかもしれないが、悪い仁木を理路整然とやり込める勝元には、それなりの重厚さを求めてしまう。しかし、染五郎の勝元はまるで正反対、重みゼロ。まだ20代後半、地方に派遣された成績トップ官僚みたいだ。

この仁木弾正と細川勝元、ある意味バランスが取れていると言えなくもないのだが、なんかイメージと違うのだね。

山名宗全(友右衛門)、権力におもねる裁き人。ちょうどよい塩梅に軽く、役に合っていた。

「刃傷」 -にんじょう、と読むことを今知った。

渡辺外記左衛門(歌六)、さっきまで悪役八汐だったのに、今度は人の好い爺さん役。でも全く違和感なく溶け込むところがさすが。息子たちに助けられ仁木を必死で討つとき応援したくなってしまう。

そして討たれる仁木弾正(吉右衛門)、この場面は良かった!なんなんだ。十分貫禄ある悪の中の悪、仁木弾正に見えた。立ち回り、片足で立つときちょっとドキドキしたけど、それも含めて吉右衛門らしい仁木弾正だった。

ちょいメモ備忘録201500926-06

通し狂言「伽羅先代萩」、とても良かった。「対決」の染五郎と吉右衛門以外は適材適所、完璧な配役。吉右衛門も「刃傷」と「床下」は良かったし。千穐楽は大向こうも盛り上がり楽しい。そして何よりも玉三郎さんの熱演に大拍手です。

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08:31 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)

九月秀山祭大歌舞伎 「双蝶々曲輪日記 新清水浮無瀬の場」「紅葉狩」「競伊勢物語]

2015/09/26
九月は秀山祭。だけど、結局リピなし観劇になり、ちょっと残念。

ちょいメモ備忘録201500925-01

一、双蝶々曲輪日記 「新清水浮無瀬の場」
南与兵衛:梅玉/藤屋吾妻:芝雀/平岡郷左衛門:松江/太鼓持佐渡七:宗之助/堤藤内:隼人/井筒屋お松:歌女之丞/手代権九郎:松之助/三原有右衛門:錦弥 ※(配役変更)/山崎屋与五郎:錦之助/藤屋都:魁春

南与兵衛と山崎屋与五郎のキャラが対照的。南与兵衛(梅玉)は「ぴんとこな」。一見やさ男風なんだけど、頼りがいと男気がある。立ち廻りもどこか余裕があってかっこいい。山崎屋与五郎(錦之助)は「つっころばし」。前に見た染五郎の与五郎よりも年季が入っている分、なよっとした所作が堂に入っている。吾妻の肩を抱くしなしなっとした腕も優男。

与兵衛の愛人は藤屋都(魁春)。与兵衛相手に恋人モードになるけど、松之助の指を切る大胆さがあり、それを証拠に与兵衛を殺人の罪から逃そうと一計を案じる女性でもある。理知的で頭が切れそう。それに比べて与五郎の愛人吾妻(芝雀)はジェラシーが強い。芝雀さんの女形ってどこかじめっとしている気がする。そういう役が多いのか?

郷左衛門(松江)は恋の鞘当に出てくる典型的な意地悪ライバル。絶対最後は振られるキャラ。両手両腕をプルプル震わせて吾妻に嫉妬するのがちょっとかわいい。手代権九郎(松之助)、かなりのはまり役。都が好きでデレデレ。せこい悪巧みを考えにやけて笑う。嫌な奴だけど憎めない。佐渡七(宗之助)、太鼓持らしい軽さと調子のよい悪賢さ。堤藤内(隼人)、お役人。二枚目をアピールしてたように見えた。松之助を「ひったてぇ!」と命ずる声にもっと張りが欲しい。井筒屋お松(歌女之丞)、遊女たちをまとめるしっかり者。

いろいろもめてたけど、最後の南与兵衛(梅玉)の宙乗りに全部持っていかれた印象。赤茶の傘を手に清水観音の舞台から、ゆうらりと宙を舞う与兵衛。梅玉さん自身が宙乗りを楽しんでそうだ。桜の中の宙乗り、それを優雅に楽しむ梅玉さんにほっこり。

ちょいメモ備忘録201500925-02

二、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)
更科姫実は戸隠山の鬼女:染五郎/局田毎:高麗蔵/侍女野菊:米吉/山神:金太郎/腰元岩橋:吉之助/従者左源太:廣太郎/従者右源太:亀寿/平維茂:松緑

「双蝶々曲輪日記」では桜が舞い、季節感ないなと思ったら、今度はちょっと(かなり)早いけど紅葉。季節感たっぷり。

右に義太夫、真ん中右よりに長唄、左には常磐津で伴奏。それぞれの音曲を同時に聞くことができ嬉しい。歌も三味線も、長唄がやっぱり一番聴き慣れている(笑)。

見所は染五郎の女形でしょう。初見かも。そして染五郎は立役なんだ、と思った。前半の更科姫、眉毛が太くて、赤姫なのに顔も仕草もあまり可愛くない。小林幸子に似て蝶。後半で鬼女に変わるからか?腹に一物あるわけだから、こういう役なのか。踊りはどこかもっさりしているし、扇子も体の一部になっていないので不安定。でも、鬼女の本性を顕した瞬間はとても綺麗だった。

平維茂、松緑の通常運転。やはり松緑の口跡は苦手と思ってみていたが、後半の立ち廻り、動きが良かった。刀を持って右に左に大きく動くときの風格と貫禄。

特筆すべきは染五郎のご子息、山神(金太郎)。勧進帳の太刀持ちで猫背で座っていた子と同一人物とは思えない。四方八方、頭の上まで両手を鳴らすときのキビキビした動き。腰もしっかり入っているし、体の切れもいい。この年でここまで踊れるなんてすごい。観客も拍手喝采。今後がとても楽しみだ。

局田毎(高麗蔵)、染五郎の更科姫との連れ舞い、更科姫よりもきれいだった。黒い衣装と所作が上品。侍女野菊(米吉)はお尻の大きそうな侍女。良いお母さんになれそう。従者右源太(亀寿)、口跡も動きもキビキビ明晰で見ていて気持ちが良い。こういう舞台を締める人が必要と思わせてくれる。亀寿、どんどん従者が似合うようになっている。従者左源太(廣太郎)、よくも悪くも「青年」。腰元岩橋(吉之助)、オカメのようなお化粧。誰だろうと思ったら「播磨屋」の大向こう、吉之助さんでした。平維茂(松緑)にちょっかい出すあたり、踊りがうまいのが分かる。もっと見たかったな。

紅葉が美しく音曲が楽しい。松緑の立ち廻りをもうちょっと見たかった。

三、紀有常生誕一二〇〇年 競伊勢物語(だてくらべいせものがたり)
序幕 奈良街道茶店の場、 同 玉水渕の場
大詰 春日野小由住居の場、同奥座敷の場
紀有常:吉右衛門/絹売豆四郎、在原業平:染五郎/娘信夫、井筒姫:菊之助/絹売お崎:米吉/同お谷:児太郎/旅人倅春太郎:初お目見得:井上公春(桂三長男)/およね:歌女之丞/川島典膳:橘三郎/茶亭五作:桂三/銅羅の鐃八:又五郎/母小由:東蔵

ちょいメモ備忘録201500925-03

「紀有常生誕一二〇〇年」ってなんかすごい。「みちのくのしのぶ文字摺 誰ゆゑに乱れそめにし 我ならなくに」は百人一首の私の十八番。このお話では、このうたから娘を信夫(しのぶ)と名づけたとのこと。

親子の情愛がたっぷり詰まったお話。昨年みた「伊賀越道中双六」の「岡崎」を思い出した。主要出演者もかぶっているし、お母さん役は両方東蔵さん。

紀有常(吉右衛門)、鬘、お化粧ともに老けた印象。若い二人を犠牲にできるだけの紀有常らしい貫禄と威厳がある人が見せる涙が悲しみを誘う。ただ紀有常は、娘信夫(菊之助)の実の父親。でも、3階席の私にはあまり父親が娘を斬る悲しみは伝わってこなかった。第三者が母と娘を他人が引きさく辛さにみえた。ずっと会っていないのだから、設定通りということか。

ちょいメモ備忘録201500925-04

「競伊勢物語」のこってり感は、母小由(東蔵)のたまもの。紀有常(吉右衛門)と再会し、旧知の仲である二人が仲睦まじい語らいをする場面は、この芝居で一番ほっこりする場面。娘が母を罪人にしないよう勘当を仕向ける場面では、普段気立ての良い娘がこれだけひどいことをするのはよっぽどの事と察して、一生懸命なだめてやる優しい母。死を覚悟した娘が琴を引き、それに合わせる砧の音は、何も知らない無心の母の愛情のよう。東蔵さんの背の小さい分、母が哀れに見えた。

娘信夫(菊之助)、良かったなあ。染五郎の女形をみた後なので、ものすごい安定感を覚えた。義太夫との掛け合いも泣く場面で情感がきっちり伝わってきたし、娘らしい所作が光る。

豆四郎(染五郎)は、嫉妬深くて狭量な男。おまけに三種の神器を取り戻すのも、妻が勝手にやったこととは言えど、妻任せ。そんな豆四郎が自害を覚悟していたのは唐突に思えた。でも、骨の髄まで忠義の精神が徹底されている時代のことと考えれば納得できる。

銅羅の鐃八(又五郎)、泳ぎが得意でワイルド。野性味全開だ。声も動きもいつもの又五郎さんよりわざと軽くしているけれど、荒事っぽさもみえ、歌舞伎らしい。川島典膳(橘三郎)、厳しいお役人さん。大勢の手下を引っ張るだけの威厳があり、かっこいい。絹売の児太郎は、米吉と同じ地味な身なりでも、パッと身を引く色気がある。旅人倅春太郎、大谷桂三さんの長男井上公春くんが初お目見得ということで楽しみにしていたのに、序幕で登場したとたんいなくなってしまった。

振り返ると、やはり娘信夫(菊之助)のお琴と母小由(東蔵)の砧を思い出す。二人の別れを暗示する信夫と義太夫の三味線のハーモニー、母小由の砧を打つ無垢な思いに溢れた表情が心に残る。

ちょいメモ備忘録201500925-05

11:27 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)

「冷血」(上)(下)  高村薫

2015/09/23
クリスマス前夜の「一家四人殺し」―数多の痕跡を残しながら、逃走する犯人たち。翻弄される警察組織の中で、合田がふたたび動き出す(「BOOK」データベースより)。

冷血(上)  冷血(下)

刑罰を科すには故意が必要だが、自分の行動の意味を後から問われ説明できないことは多い。

10:11 日本・小説(新) | コメント(0) | トラックバック(0)

九月文楽「面売り」「鎌倉三代記」「伊勢音頭恋寝刃」

2015/09/15
九月国立劇場文楽公演昼の部です。夜の部と異なり、昼の部はバラエティに富む三演目。

「面売り」
文楽を見始めてまだ日が浅いのだが、複数演目を行う場合、最初の演目は前座のような演目を上演するものだと思っていた。だが、今回の「面売り」、前座とはとても言えない立派な舞台。

おしゃべりな案山子(吉田玉佳)は愛嬌がある。面売り娘(吉田勘彌)は天狗、ひょっとこ、おかめと次々と面をかぶり変え、雰囲気がどんどん変わる。竹本三輪大夫さん(面売り)豊竹睦大夫さん(案山子)のおかしものある語りも楽しかった。

「鎌倉三代記」
歌舞伎で見たことがある。魁春が時姫で、梅玉が三浦之助義村、幸四郎が佐々木高綱。あれはあれで面白かったのだが、三浦様が時姫に、「俺のことを好きなら父親を撃て」という展開がどうにも自分勝手に思えてしまい、なんじゃいこのストーリーは、と思ったのを覚えている。

しかし文楽では、「鎌倉三代記」歌舞伎で感じた理不尽さを感じなかった。まず、通しであったこと。また、義太夫の語りと人形の所作によって、時姫と三浦様の逡巡がより丁寧に描かれていたこと。さらに、佐々木高綱が、三浦様の首を撃ち取り時姫の父北条時政に近づくことを約束したことと、三浦様の母が自害し父を撃たねばならない時姫に義理を立てたことが分かりやすかったので、理不尽さが相殺されたように感じた。

全体を通して時姫(豊松清十郎)さんがピカピカしていた。可憐で健気でかわいかった。

「局使者の段」
豊竹希大夫さんの語り、年老いた三浦様の母上と、局や女房たちの声を語り分けようと努力しているのがよくわかる。年季の入った大夫さんたちだと、なぜか語り分けていることを感じなくなり、一人の大夫さんが人形ごとに別人格になるような気がするのだが、希大夫さんはまだそういう感じではなく、ある意味新鮮。

「米洗ひの段」
桐竹紋壽さんの女房おらちが最高でした。お姫育ちで家事が全然できない時姫にヤキモキして、井戸水の酌み方や米の研ぎ方を教えてやるのだが、「肩肌脱いで」って語ったと思ったら、片乳はだけさせて豪快に教えてやる。下町の肝っ玉豪快オッカサン。時姫がすり鉢でする際、女房たちが時姫を団扇で扇いでいるのを見て、「そんな暇あったらすり鉢もってやりなさいっ」と言っても埒が明かないので、自分で足を手前にでーんと投げ出してすりはじめた。かっこいい。

ちょいメモ備忘録201500914-02

「三浦之助母別れの段」
この段は何と言っても竹本津駒大夫さんの語りと鶴澤寛治さんの三味線。津駒大夫さん、いつもながら熱い。こちらも手に汗握る語り。年老いて余命いくばくもない自分の命運を知りつつも、必死で家を守ろうとする母。寛治さんの三味線も哀しみが誘う。人形遣いは桐竹勘壽さん。動きが少なくても母の想いが伝わる。

「高綱物語の段」
最後の段は足立藤三郎、実は佐々木高綱が良かった。吉田玉男さん。足立藤三郎のときは軽薄でいけ好かない、でもなんかしっくり来ないと感じたがそれは仮の姿だから。正体を現したあとは、地位ある武将らしく周囲を圧倒する威厳と立派さ。

こってりした文楽を堪能できる演目でした。

「伊勢音頭恋寝刃」
吉田簑助さんのお紺が本当にきれい。娘としての可愛さ、遊郭の女ならではの色気、惚れた福岡貢のために歯を食いしばっての愛想尽かしをする健気さ、そういうものを全部身にまとっていて美しかった。

桐竹勘十郎さんの万野、勘十郎さんって意地悪な万野を操るとき、ご自身の顔も万野みたいな顔になってしまっている気がする。ちょっとかわいい。吉田和夫さんの福岡貢、お紺に惚れたのに愛想尽かしをされ怒り狂う短気な若者らしさと、青江下坂を手にして気がふれる恐ろしさ。

ちょいメモ備忘録201500914-01

「古市油屋の段」
休演明けの咲大夫さん。今までで一番聞きほれてしまった。燕三さんの凛とした三味線と良い相性。

「奥庭十人斬りの段」
安定の豊竹咲甫大夫さんと野澤錦糸さん。首が飛びまくりだと思ったのに、あんまり飛んでなかった。意外とおとなしめ。カツサンドを食べたせいで睡魔が・・・。

文楽を初めて見た頃は義太夫に注目しがちだったのだが、最近は三味線にも目が行くようになった。この日の三味線、どれも腹と心に響いてずんと来て、聞きごたえあり。

10:28 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)

九月文楽 「妹背山婦女庭訓」

2015/09/09
国立劇場九月文楽。昼の部と夜の部どちらに行くか迷ったが、「伊勢音頭恋寝刃」は首がバッタバッタと切られて楽しそうだし、夜の部の「妹背山婦女庭訓」の通し狂言も見てみたいし、悩んだ挙句両方行くことにした(笑)。
ちょいメモ備忘録201500908-02

とても楽しかった!「妹背山婦女庭訓」はこの四月に平成中村座で初めてみたが、やはり通しで見るとストーリーが良く分かって面白い。何より人形がとてもきれい!三人の主要人物、橘姫、求女(藤原淡海)、お三輪がみんなキラキラしている。

特にそれを実感したのが「道行恋苧環」。橘姫(吉田和生)、求女(吉田玉男)、お三輪(桐竹勘十郎)、お三方揃踏み。義太夫は橘姫(豊竹呂勢大夫)、求女(豊竹芳穂大夫)、お三輪(豊竹靖大夫)。三味線は鶴澤清治、鶴沢清志郎さんほか。

歌舞伎では踊り音痴の私はしょっちゅう睡魔と戦うことになるのだけれど、この文楽の道行では眠くなるどころか、夢中になって見た。五人の義太夫、五人の三味線が大迫力。求女は気品あふれる二枚目、でも優柔不断の二股男。染五郎と錦之助をたして2で割った感じ。橘姫は優雅なお姫様、でもとっても健気。芝雀さんみたい。橘姫が求女への思い入れたっぷりに舞い、それに翻弄される求女。そこに現れる桐竹勘十郎のお三輪ちゃん。娘らしさは菊之助、嫉妬深さは七之助、それに玉三郎の華やかさを合わせ持つ。求女のために一生懸命な姿がいじらしくて可愛くてたまんない。勘十郎さんすごい。道行だけもう一回見たい。

「井戸替えの段」、酒盛りの場面が超楽しい。みんなで歌って踊ってどんちゃん。足を開いて、柏原芳恵がやってた「ビタミンC」みたいなポーズをとったりして(←誰も分からん)。豊竹松香大夫さんのテンポ良い語り語り。

「杉酒屋の段」、豊竹咲甫大夫さんの若々しい語りが良かった。竹澤團七さんの腹に響く三味線がお気に入り。白の苧環、赤の苧環を足にひょいと掛けられた後、想い人を追っかけて行く場面展開が面白い。お三輪母(吉田文昇)さんがいかにも口うるさいオッカサン。

ちょいメモ備忘録201500908-01

「鱶七上使の段」、最初の豊竹咲寿大夫のちゃりがけみたいな語りが楽しい。高い声に合っている。鱶七は二世尾上松緑みたい。豪放磊落で槍に突き出されても動じない。文字久大夫の語りは鱶七の方が入鹿より似合う。入鹿はスケールのでかい悪玉なのに、おとなしめ。

「姫戻りの段」、さんざん優柔不断で翻弄したあげく、正体を知られたら橘姫を殺そうとして、あげくに入鹿の盗み取った宝剣を取り戻したら夫婦になろうとか、求女、ひどくない?そんな求女に従う橘姫、健気すぎる。

「金殿の段」、お三輪ちゃんがいじめられる段。いじめの場面は平成中村座で見ても気分良いものではなかったが、、文楽では歌舞伎ほど不快ではなかった。歌舞伎では立役が中心にいじめて笑いに昇華しているのだと思うが、文楽はそのまんま女によるいじめ。よりリアルなはずなのに不思議だ。人形だからリアルさが軽減されるのか。

いじめられた悔しさ、恥ずかしさ、橘姫への嫉妬から逆上したお三輪ちゃんの荒れ狂った様相がすごい。千歳大夫さん、感情の起伏がはっきりする場面が予想通りうまい。お三輪ちゃんの炎のような激情と一体となって盛り上がる、盛り上がる。千歳大夫さん、豊澤富助さんの繊細な三味線と良いコンビ。

「入鹿誅伐の段」、この段の入鹿(吉田玉輝、豊竹始大夫)はスケールが大きいいかにも悪の親玉。悪人だけどかっこいいぞ。鎌足(吉田文司、竹本津國大夫)、淡海(吉田玉男、竹本南都大夫)もみんなスケールが大きくて見応えあり。ラスト、入鹿の首が飛んで空中を舞いまくって、完。

ちょいメモ備忘録201500908-03

文楽、歌舞伎より常に完成度が高い気がする。その分歌舞伎の方が心配させられたりとか別の愛着もわくのでどちらが良いというのではないけれど。夜の部、楽しかったです。

11:57 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)
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