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「推理小説」 秦 建日子

2014/10/14
42歳の会社員と17歳の高校生、大手出版社の編集者…全く面識のない人々が相次いで惨殺された。事件をつなぐのは「アンフェアなのは、誰か」と書かれた本の栞のみ。そんな中、警察と主要出版社に『推理小説・上巻』という原稿が届く。書かれていたのは犯人しか知ることの出来ない事件の詳細と殺人の予告、そして「事件を防ぎたければ、この小説の続きを落札せよ」という前代未聞の要求…ミステリの既成概念を破壊し、リアリティの迷宮へと誘う超問題作(「BOOK」データベースより)。

推理小説

殺人事件の現場は戸山公園。あらら。大久保通りが近いということは明治通り側ではなく、文学部の先かな。一読したときは良く分からなかったのだが、二回目に読んでようやく筆者の意図が分かったような分からなかったような。「アンフェアな月」のような分かりやすいものではない。以下、まとめ。

「推理小説」ほど退屈な小説はない。なぜなら、事件は必ず解決する、犯人は必ず明らかになる(p.87)という結末が判明しているから。しかし、多くの読者は、最後に事件が解決するとは限らない、最後に犯人が明らかになるとは限らない小説だとしたら、読むのをやめてしまうだろう(p.89)。また、「推理小説」は展開がフェアでなければならず、動機にリアリティがなければならない。しかし、分かりきった結末、お約束のどんでん返し(そんなものはどんでん返しと呼べない)(p.257)、登場人物の説明的な振る舞いを(p.204)を求める読者の読む「推理小説」の展開がフェアであるはずはなく、動機にリアリティがあるはずもない。

リアリティのない「推理小説」がもてはやされる出版界、もしくは展開がアンフェアで動機にリアリティがなく、しかも説明的で無意味なルールがある世の中にうんざりする犯人は、「推理小説」を書き、その通り実行し、本当のリアリティを世の中に教えようとした(p.283)。

犯人の書く「推理小説」の展開はフェアでないかもしれない。でも、推理小説で守られるべき最低限のルールを遵守したはずだった。それは、クライマックスで犯人は嘘をつかないこと、読者が自力で真相に辿り着けるだけの手がかりを用意していること(p.178)。しかし犯人は自分の欲望を満たすため、ルールを守らなかった。でもだからこその動機のリアリティ。展開はアンフェアだが。

「アンフェアなのは誰か」ーアンフェアなのは、犯人。しかしアンフェアな小説に満足してしまっている読者、またはリアリティのない世の中以外認めない人すべてもアンフェアなのだ。

22:00 日本・小説(新) | コメント(0) | トラックバック(0)
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