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国立劇場 「双蝶々曲輪日記」

2014/10/12
10月国立劇場、行く予定はなかったのだが、食卓横に置きっぱなしにしていたポスターの染五郎の見得に見とれること1ヶ月。結局1番後ろの席を購入。

平成26年度(第69回)文化庁芸術祭主催 竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言双蝶々曲輪日記
松本幸四郎:濡髪長五郎/市川染五郎:山崎屋与五郎・南与兵衛・放駒長吉三役/中村芝雀:藤屋都のちお早/市川高麗蔵:藤屋吾妻/中村松江:山崎屋番頭権九郎/三原伝造:大谷廣太郞/仲居頭おいち:大谷廣松/澤村宗之助:幇間佐渡七/松本錦吾:平岡郷左衛門/平岡丹平:大谷友右衛門/中村東蔵:母お幸/中村魁春:長吉姉おせき

「序幕 新清水の場」
染五郎、この場では与兵衛、与五郎として登場。与兵衛は今一つキャラがつかめなかった。与五郎は、和事の女にもてる情けないへなちょこキャラ。こういう役はやっぱり染五郎に向いている。

吾妻の高麗蔵さん、きれいだなあ。売れっ子遊女の役がお似合い。そして安定の芝雀さんの都。二人が互い好きな人について話している場面は、現代で女の子が彼氏の話で盛り上がっているのと変わらない。相手は両方染五郎なんだけど(^^;;) 悪巧みしているのが松江さんの権九朗、宗之助さんの佐渡七。こういう役柄の二人を見たことがなく、すごく新鮮。

最後に染五郎の与兵衛が「楼門五三桐」みたいなセットをバックに、桜がひらひら舞い散る中、まぶしそうに宙乗り。唐突な印象だが、楽しいからOK。

「二幕目 堀江角力小屋の場」
夏に見た播磨屋巡業と違い、与五郎と吾妻が最初に登場。通しで筋が分かりやすいから、カットしないってことか。

で、お相撲の場面。やっぱり楽しい。お相撲が終わった後、観客が「長吉勝った、長吉勝った」と言って小屋から出てくるとき、ニコニコしたり、プンプン怒っているのが結構好き。

そして染五郎の放駒長吉登場。勝って大喜びしているのが微笑ましい。「自分はやっぱりチョコチョコの方が歩きやすい」とか言って花道を引っ込んでいくとき、花道向こうのお客さんが皆ニコニコしているのを見るのが楽しい。濡髪長五郎がわざと負けたことが分かりショックを受け怒っている図で、滲み出る短気な商家の若者らしさ。夏の巡業でみた歌昇の長吉はもっとへなちょこだったけど、染五郎の長吉は、肉体的にも精神的にもそれなりに力のあるお相撲さん。

幸四郎の濡髪。横綱の絶対性はないが、動物的な強さを発揮して勝つ物静かな横綱。こんなお相撲さんいた気がする。幸四郎らしい濡髪。

「三幕目 大宝寺町米屋の場、難波芝居裏殺しの場」
濡髪長五郎と放駒長吉の取り組みの場面が良い。吾妻のことでもめての取っ組み合いだから、本当の取組みではないけど。お気に入りのこのポスターのポーズを染五郎がしてたと思う。
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染五郎長吉の方がお相撲さんっぽく、取り組みも本物らしい。諸肌脱いで見せる長吉の赤い着物が鮮やか。長吉が持ち出した刃を、俵で濡髪が受け止め米が流れ落ちるのが一つの見せ場。

長吉の姉役のおせきは魁春さん。優しくて、弟への責任感ある姉。弟が金を盗んだことにして、「実は自分が隠した」と言ったとき観客は笑ってたけど。一緒に弟を責めてた人たちの雰囲気がコロッと優しげな目になってたのが印象的。魁春さん、やっぱり上手い。義太夫と一緒に踊って物語るときにそれを実感する。

そして殺しの場面。安定のだんまり。

「四幕目 八幡の里引窓の場」
幸四郎の横綱濡髪。力士の道は決して平坦なものではなく、ようやく横綱にまで上り詰めたのに、築き上げたものをすべて失おうとしている。最後に一目会いたいと願う、母親を恋い慕う思いが切ない。横綱も人の子なんだなあ。すべてを失った濡髪はこの後どうなるのだろう。

染五郎の与兵衛は、就職してはり切っている新入社員みたい。手柄を立てられそうなのに、継母の実子長五郎のためにあきらめる悔しさ。継母には、金で似顔絵を買い取るという非常にシビアな解決法を提示される。実子の方が大事だと思われても仕方がない。こりゃあ、ショックだわ。こちらもその後が気になる。染五郎の与兵衛はこの後、義母との関係は修復不可能だろう。ていうか、グレるね。侍にせっかくなったのに、やる気なくしそう。

東蔵の義母お幸、結構気の強そうなお母さん。きっちり泣かせてくれました。芝雀の女房お早、元遊女だけあって艶っぽいけど、きちんと旦那様に仕えようとする女房。

引窓をあけ、手水鉢に映った長五郎の姿を与兵衛が気づき、お早が紐を引いて引窓を閉める場面、オペラグラスで東蔵さんたちをガン見していて若干見損ねてしまった。ありがち。あと、与兵衛が「濡髪、捕った」と言って黒子をとる場面、よく分からなかった。客席は笑ってたけど。

「双蝶々曲輪日記」@国立劇場、通し狂言で見る面白さをきっちり満喫。

幸四郎の濡髪、絶対的な存在の横綱ではないが、地方から出てきて真面目に相撲に取り組み、最高位に上り詰めても、贔屓の客を大事にして感謝の心を忘れない横綱。人を殺してしまい追い詰められる、幾つになっても母親を恋い慕う。そんな不器用な濡髪が幸四郎に合っていました。

染五郎は、このお芝居で早代わりはしなくても良いのでは。長吉と与兵衛はやらないわけには行かないから、与五郎は他の役者さんに譲ってあげたらどうか。と思ったのだが、染五郎には、与五郎が一番向いている気もするし。最近、私自身があまり早代わりを好きじゃない事に気がついたのだが、早代わりすると客の入りが違うのか?あと、染五郎の声がときどき割れてるのが気になった。

角力場ということで、会場内でお相撲グッズを販売。私は今回はじめて台本を購入。台本には、「濡髪はいい男じゃて、松本幸四郎にそっくりじゃ、わしももう少し若ければ(大意)」みたいなセリフがはっきり書いてあった。台本にちゃんと書いておくものなんだね。
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終演後、伝統芸能情報館で「鈴木十郎コレクションの内~代々の團十郎~」の展示を見てきた。5・7・8・9・10・11代目の書画、書簡など。海老の絵が結構あった。あと、團十郎にまつわる荒事の映像等。歌舞伎俳優研修生になって2ヶ月の若者が、先代又五郎さん指導の下、発表会で車引を演ずるまでの映像をみた。45分と長いが面白かった。笑也さんいたかも。貴重映像です。

00:44 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)
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