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「菅原伝授手習鑑」 寺子屋のせりふ

2014/10/17
「菅原伝授手習鑑」寺子屋で好きなせりふ、気になるせりふ、聞きとりたいせりふを集めてみました。名作歌舞伎全集第2巻、舞台を参考に。

源蔵戻り。
立ち帰る主の源蔵、常に変わりて色青ざめ、内入り悪く子供を見廻し
源蔵「氏より育ちというに、繁華な地と違い、いずれを見ても山家育ち、世話甲斐もなき役に立たず」。

源蔵、小太郎と対面。
♪言うに思わず振り仰向き、キッと居るよりしばらくは、打ち守りいたりしが、たちまち面色やわらぎ
源蔵「器量すぐれた気高い生まれつき、公卿高家の子息と言うても、おそらくは恥ずかしがらず、ハテサテ、そなたはよい子じゃなア」。

戸浪と源蔵が相談。
戸浪「様子聞かして下さんせ」。
源蔵「(中略)是非に及ばず首打って渡そう、とサ、請け合うた心はナ、数多ある寺子のうち、いずれなりとも身代りと、思うて帰る道すがら、あれかこれかと指折っても、玉簾(たまだれ)の中の誕生と、菰(こも)だれの中で育ったとは、似ても似つかず」(中略)。
戸浪「待たんせや、その松王という奴は、三ツ子の中のいっち悪者、若君のお顔はよう見知っているぞえ」。
源蔵「そこが一か八か、生顔と死顔は相好の変わるもの、面差し似たる小太郎が首、よもや偽とは思うまじ。よしまたそれと顕れたらば、松王めを真っ二つ、残る奴輩切って捨て、叶わぬ時は若君もろとも、死出三途の御供、と胸は据えたが一つの難儀、今にもあれ、小太郎が母親、向かいに来たらば何とせん。この儀に当惑、さし当たったはこの難儀」。
戸浪「そのことは気づかいさしゃんすな、女子同士の口先で、ちょぼくさ欺してみようわいな」。
源蔵「イヤ、その手では行くまい。大事は小事より顕るる。ことによったら母もろとも」。 
戸浪「エ々」。
源蔵「コリャヤイ、若君には替えられぬわえ」。 ♪言うに胸据え
戸浪「そうでござんす。気弱うては仕損んぜん。鬼になって」。
♪鬼になってと、夫婦はつっ立ち、互いに顔を見合わせて
源蔵「弟子子といえば、わが子も同然
戸浪「今日に限って寺入りした、あの子が業か、母御の因果か」。
源蔵「報いは此片が火の車」 戸浪「追っつけ廻って来ましょうわいなア」。
♪妻が嘆けば夫も目をすり
源蔵「せまじきものは、宮仕えじゃなア」。♪ともに涙にくれいたる。

松王丸登場。
松王丸「お待ちなされ、しばらく」(中略。途中せきこむ。ゴホゴホ)。コリャヤイ、百姓めら、ざわざわとぬかさずと、一人ずつ呼び出せ。面あらためて戻してくりょう」。

源蔵・千代VS松王丸。
松王丸「その手は食わぬ。暫しの容赦と隙(ひま)取らせ、逃げ支度致しても、裏道へは数百人を付け置きたれば、蟻の這い出るところもない。また、生顔と死顔とは相好の変わるなぞと、身代りの偽首、それも食べぬ。古手なことして後悔すな」。
源蔵「ヤア、いらざる馬鹿念。病みほうけた汝が目玉がでんぐり返り、逆様眼で見ようは知らず、まぎれもなき管秀才の首、追っつけ見しょう」。
松王丸「その舌の根の乾かぬうち、早く討て」(中略)。
♪はッとばかりに源蔵は、胸を据えてぞ入りにける。傍に聞きいる女房は、ここぞと大事と心も空、検使は四方八方に、眼を配る中にも松王、机文庫の数を見廻し
松王丸「合点の行かぬ。先立って帰った餓鬼らは以上八人。机の数が一脚多い。その倅は何処にいる」。
戸浪「イヤ、こりゃ、今日はじめて寺」。
松王丸「ナニ」。戸浪「イエアノ、寺参りした子がござんす」。
松王丸「ナ、ナ、なにを馬鹿な」。
戸浪「オ々、それそれ、これがすなわち管秀才様のお机文庫」(中略)。
♪こなたは手詰命の瀬戸際、奥にはバッタリ首打つ音
源蔵「(奥にて)エイ」。
♪ハッと女房胸を抱き、踏ん込む足もけしとむ内。ト戸浪、松王と行きあたる。
松王丸「無礼者め」(ゴホゴホゴホ!)。

歌舞伎座看板より(十七世、十八世 中村勘三郎さんの追善公演)。


首実検。
源蔵「いわば大切な御首、性根を据えて、しっかりと検分せよ」。
♪忍びの鍔(つば)元寛(くつろ)げて、虚と言わば斬りつけん、実と言わば助けんと、固唾をのんで控えている。
松王丸「今浄玻璃の鏡にかけ、鉄札か」。
玄蕃「金札か」。 松王丸「地獄」。玄蕃「極楽の境」(中略)。
源蔵「サア、実検せよ」(中略)。
戸浪「天道様、仏神様」♪憐れみ給えと女の念力(中略)。
松王丸「ムウ、こりゃ管秀才の首に相違ない。相違ござらぬ。出かした源蔵、よく討った」。

源蔵、戸浪、身代り成功を喜ぶ。
源蔵「ハア、有難や忝や。凡人ならぬ若君の、御聖徳願われて、松王めが眼(まなこ)霞み、若君と見定めて帰ったは、天成不思議のなすところ、御寿命は万々歳、悦べ、女房」。
戸浪「あの松王が眼の玉へ、菅丞相様が入ってござったか。ただしは御首が黄金仏ではなかったか、似たというても瓦と黄金、宝の花の御運開き、あんまり嬉しゅうて、嬉し涙がこぼれるわいな」。

千代、松王丸登場。
千代「若君管秀才様の御身替わり、お役にたてて下さったか、ただしは未だか、サアサア、サアサア、様子が聞きたい、なんとでござんす」。
♪言うにびっくり。
源蔵「シテシテそれは得心か」。
千代「アイ得心なりゃこそ、経帷子に六字の幡(はた)」。
源蔵「シテ其許は何人の御内証」。
♪尋ぬる内に門口より  源蔵「梅は飛び、桜は枯る々世の中に
松王丸「何とて松のつれなかるらん。女房喜べ、倅はお役に立ったわやい」。
源蔵「おのれ松王」。
松王丸「源蔵殿、先刻は段々」。

松王丸、千代の嘆き。
松王丸「(中略)机の数を改めしも、我が子は来たかと心のめど。菅丞相には我が性根を見込み給い、何とて松のつれなかろうぞとの御歌を、松はつれないつれないと、世上の口に」。♪かかる悔しさ 「推量あれや源蔵殿、倅なくばいつまでも、人非人(ひとでなし)と言われんに、持つべきものは子でござる」。
千代「持つべきものは子なりとは、あの子がためによい手向け。思えば最前別れた時、いつにないあと追うたを、叱った時のその悲しさ。冥土の旅へ寺入りと、はや虫が知らせたか。隣村へ行くというて、道まで去んで見たれども、子を殺させによこして置いて、どうまで家へ去なるるものぞ。死顔なりともま一度みたさに、モシ」「何の因果で疱瘡まで」。
松王丸「コリャ女房なんでほえる(中略)。もう泣くな」「イヤナニ源蔵殿、申しつけてはおこしたれど、さだめて最後の節、未練な死を致したでござろうな」。
源蔵「イヤ、若君管丞相の御身替りと言い聞かしたれば、潔う首差し延べ」。
松王丸「アノ、逃げ隠れも致さずに」。 源蔵「にっこりと笑うて」。
松王丸「何、にっこりと笑いましたか。コリャ女房、にっこりと笑うたといやい。ムハヽヽヽヽヽ。おう、出かしおりました。利口な奴、立派な奴、健気な、八つや九つで、親に代わって恩送り、お役に立つは孝行者、手柄者と思うにつけ」 ♪思い出だすは桜丸。御恩も送らず先立ちし、さぞや草葉の陰よりも、羨ましかろ、けなりかろ。倅がことを思うにつけ、桜丸が不憫でござる。源蔵殿、御免くだされ」。

いろは送り(松王丸が焼香を始めたあたりで、「い・ろ・は」スタート)。
♪いろは書く子はあへなくも、ちりぬる命是非もなや、あすの夜誰か添乳せん、らむ憂い目見る親心、剣と死出の山け越え、あさき夢見し心地して、跡は門火に酔ひもせず、京は故郷と立ち別れ、鳥辺野さして連れ帰る。

21:42 歌舞伎のせりふ | コメント(0) | トラックバック(0)
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