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二月大歌舞伎「吉例寿曽我」「毛谷村」「積恋雪関扉」

2015/02/13
二月歌舞伎座、昼の部へ。平日三階席、結構空席が目立つ。「二八」は客が入らないって本当なんだ。

ちょいメモ備忘録20150213-06

一、吉例寿曽我 鶴ヶ岡石段の場、大磯曲輪外の場
近江小藤太:又五郎/八幡三郎:錦之助/化粧坂少将:梅枝/曽我五郎:歌昇/曽我十郎:萬太郎/朝比奈三郎:巳之助/喜瀬川亀鶴:児太郎/秦野四郎国郷:国生/茶道珍斎:橘三郎/大磯の虎:芝雀/工藤祐経:歌六

鎌倉の鶴ヶ丘八幡宮で奴二人が登場して密書を奪い合う場面から。吉三郎さんと又之助さん。二人の躍動感ある動きで舞台に生命が吹き込まれる。もう少しテンポが良いといいなあ。でも、つかみはOK。

紅梅の飾りの下、石段。錦之助さんの八幡三郎と又五郎さん近江小藤太登場。正統派で柔らか味ある八幡三郎と苦虫を噛み潰したような終始硬い表情の小藤太、対照的で良い組み合わせ。石段の立ち回り、そしてだんまり。少し迫力不足な気もしたけど、こんなもんか。がんどう返しは豪快。ずっと立っているのはとてーも大変な事なんだろうな。錦之助さん、膝まづいたが無事に持ちこたえる。

お次の装置はでーんと富士山。お正月の芝居みたいだ。大薩摩は安定の杵屋栄津三郎さん。

その後中セリが上がり、豪華絢爛な衣装の七人が微動だにせず登場。煌びやかな人形のような七人に思わず息を呑む。また歌舞伎を見に来られた事に思わず感謝。左から順に、巳之助の朝比奈三郎、橘三郎さんの珍斎、児太郎の喜瀬川亀鶴、工藤祐経は歌六さん、大磯の虎の芝雀さん、梅枝の化粧坂少、国生の秦野四郎国郷。

歌六さんの工藤祐経、場をおさめる器量十分。巳之助は朝比奈三朗。「対面」で朝比奈の妹舞鶴はお目見えしたが、兄とは初対面。巳之助が妙に目立つでかい声で道化役らしく頑張ってた。女形は児太郎、芝雀さん、梅枝。美しい衣装と立ち居振る舞い。順調に歌舞伎役者らしい風貌に成長している秦野四郎国郷の国生。橘三郎さんの珍斎、五郎十郎に「歌舞伎役者に似ておる」っていう台詞が柔らかく優しげ。

五郎十郎登場。歌昇がいつも頑張っているのはよく分かるが、線が太くないから五郎みたいな役はあまり合わないような。むしろ十郎で見たい。その十郎を演じた萬太郎、品が良く柔らか味あり立派で好感。

そしてまだもだんまり。こんなに豪華に勢ぞろいした面々でもだんまりをするのか。ラストはまた七人で微動だにせず、人形のように見得を切り、幕。静止する事で放たれるエネルギーに感服。

二、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち) 毛谷村
毛谷村六助:菊五郎/お園:時蔵/微塵弾正実は京極内匠:團蔵/お幸:東蔵/杣斧右衛門:左團次

初見の演目。毛谷村=もうたに村じゃなくて、けや村!

戯曲で主役の六助は、気は優しくて力持ち、でもちょっと抜けてる。菊五郎のそういう役が想像つかなかったが、さっくり六助におさまってました。微塵弾正に勝ちを譲ったり、子供をかわいがったり。剣術の達人だけど、人に騙されもする、どこにでもいそうな善良なお百姓さん。仲間内では頼れる存在のはず。六助の愛すべきキャラを中心に話が展開。

まず、團蔵の微塵弾正と、菊五郎の六助の剣術の試合から。自宅で決闘する不思議。そういうもの?わざと負ける約束をした弾正と六助が目配せしてタイミングを指示(?)しているのがコミカルで楽しい。負けて弾正に頭をはたかれた六助、訝しげな表情がちょっとかわいい。團蔵さんの弾正、お園の妹お菊を殺すほど非道で性悪。でも試合でズルするくらいの、大して強くない中途半端なお侍。

お園の妹お菊の息子、弥三松が花道をネズミ捕りみたいな籠をずりずり引きずって登場。とても可愛くって場内笑顔。六助が弥三松を可愛がる場面もほほえましい。「実盛物語」でも思ったのだが、菊五郎さんが子供をかわいがる場面はすごくなごむ。「やさしいおっちゃん」って感じ。生来の父性がにじみ出るのか。

そこに登場するのが、時蔵さんの虚無僧の出で立ちのお園。手のかたち等から瞬時に女と分かる。並みの腕の持ち主でなく、女だてらに勇ましく立ち回り。この後の太鼓を叩く六助VS刀を振り回すお園のやりとりが楽しい。私的に一番の見所。六助を敵と思い込むお園が刀をかまえ、対する六助はでんでんと太鼓を叩きながら事の次第を語る。二人の呼吸がぴったりでテンポが良い。 六助が婚約者と気づいた後は、お園の独断場。びっくりして弥三松をなんと落っことし、弥三松頭を抱える(漫画チックでここもかわいい)。勇ましかった女虚無僧が一気に乙女らしさをスパーク、薔薇色モード。初対面の婚約者に会うのがこんなに嬉しいものなのか、となぜか自分を省みる。お園は可愛いんだけどちょっとうっとうしくて、そのスパークぶりを菊五郎の六助が無気味がって、若干引いているのがイイ。 

その後お園のクドキだが、忍びの者をあしらいながらというのが面白い。忍びは尾上音蔵さん。調べたら、平成25年に研修生を修了した若手。伝統歌舞伎保存会研修発表会で主役の御所五郎蔵を演じたらしいので期待の星かも。くるんくるんと軽やかに舞う若くしなやかな身体が美しい。 そして突然登場するのが東蔵さん、お園の母であるお幸。本当は六助宅にお幸が「私を母と思ってお宅にお邪魔させて」とか言って上がりこむ場面があるはずなのだが、省略されており、いきなり登場してきた感ありあり。東蔵さん、いつもより声が小さめで心配。でも、安定したお母さん役でした。母を殺された左團次さん、朴訥さにバラエティで見せる飄々としたキャラクターを加味した感じ。

ラスト、怒りを爆発させ敵を討たんと準備をする六助。敵が分かり涙にくれていたお園だが、六助に照れながら「女房ども」と言われ、乙女再燃。庶民的に照れ合う新婚の二人、初々しくていいなあ。「一緒に敵討ちに行く」という弥三松が、六助と一緒に見得。それにしても歌舞伎の子役っていつもうまくて感心する。今回の弥三松くんは、身体のサイズも演技もとても子供らしい子供を演じていて、本当にかわいい。

正統派菊五郎劇団のお芝居を見た、という印象。安定感があり安心して観劇。不安定な魅力というのもあるけど、それだけじゃね。

三、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
関守関兵衛実は大伴黒主:幸四郎/小野小町姫、傾城墨染実は小町桜の精:菊之助/良峯少将宗貞:錦之助

「積恋雪関扉」。演目名が気になっていた。恋心が雪のように積もる?よく分からないけど、幻想的な踊りをみせる演目というイメージを抱き観劇。実際に見たら、思ったよりお芝居お芝居してた。

幸四郎、いつもどおり大熱演。気合十分の所作が力強い。ただ小野小町と宗貞を冷やかす関兵衛に軽さがなく、突き抜け感がない。でも関兵衛は実は大伴黒主で、腹に一物も二物もある役なわけで、こういう役なのだろうか。よくわからない。
ちょいメモ備忘録20150213-08

印象的だったのは菊之助。宗貞に焦がれる小野小町姫、可憐で一途な赤姫。白い衣装に流し目で関兵衛を誘惑する傾城墨染。そして強い意志を秘めるものの儚げな小町桜の精。三通りの女形、どれも美しかった。菊之助には女形を極めてほしい。

ちょいメモ備忘録20150213-10

錦之助さんの宗貞、優しくて、でも少し気が弱く柔和な男。ニンですね。それにしても、これだけイケメンの錦之助さんなのだから上手い形で売り出せば、大ブレークしてた可能性もあったのにと思ってしまう。

墨染が小町桜の精に、関兵衛が大伴黒主になるぶっかえりは予想通り楽しく、ラストの二人の立ち廻り、見得とも堪能。

昼の部の三演目はどれも一度は見たいと思っていたものばかり。制覇(?)できて満足。

20:40 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)
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