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明治座五月花形歌舞伎「あんまと泥棒」 「鯉つかみ」

2015/05/12
今年三月の歌舞伎座公演「菅原伝授手習鑑」で愛之助贔屓に→明治座夜の部で「鯉つかみ」行ってみよう♪てなわけで、五月初歌舞伎は明治座夜の部です。

ちょいメモ備忘録20150512-06

明治座へ行くのは初めて。歌舞伎座や国立劇場とは一歩引いたところで、優雅にそり立っている印象。役者の名を記したのぼりが飾られると知り楽しみにしていたが、台風接近のためか見当たらず、残念。開演15分前に無事に到着、安心して喫茶室をチェックしたり、写真を撮影したり。いざ自分の席に向かおうとしてはじめて明治座では建物の三階に、劇場の一階席があることを知る。今日は三階席。つまり直ちに建物の五階に上らなければならないのだ。愕然。おまけに二階から三階へ上るエスカレーターがない!三階へは比較的段数の少ない階段で上れるのだが、けっこうあせった。
ちょいメモ備忘録20150512-01

こちらが今回の席からの眺め。三等B席0番。0番ってなんじゃい、なぜ1番にしないの?と疑問だったが、役者が花道を引っ込む姿を端から端まで見届けられ、けっこう良いお席だと思った。ただ移動の際、手すりの向こう側に手荷物がいってしまい、落とさないかとひやひや。
ちょいメモ備忘録20150512-02

一、あんまと泥棒
泥棒権太郎:猿之助/あんま秀の市:中車

猿之助と中車の二人芝居。歌舞伎で二人芝居を見るのは初めてかも。二人それぞれの役作りを味わう演目だった。

中車、今回も入念な役作りをしていることがよーく見てとれた。お役は秀の市。目の見えないあんまさん。自分の行く先を杖でそれは派手に探る。動きはキコキコ、まるでロボット。この歩き方、一筋縄でいかない秀の市の性格そのもの。そして秀の市の百面相!泥棒権太郎(猿之助)からお酒をもらえたときのとろける様なくしゃくしゃの表情、お金を恵んでもらったときのふにゃっとした表情、 権太郎が最後にいなくなったときの「してやったり」という表情。一つ一つ中車が練りに練ったに違いない表情をする。正直言って暑苦しいが、泥棒から金を巻き上げるくらい秀の市は泥棒よりも上手(うわて)な人物なわけで、中車の今回の一癖ふた癖もある役作りは正解だと思う。

猿之助の泥棒権太郎、まず最初に後向きで登場、三階から足がよく見えたのだが、この足がカッコイイ。泥棒らしく動きに躍動感がありかつしなやかで、とりあえず足だけで見とれてしまった。秀の市から金を巻き上げようとするものの、酒を秀の市に飲ませた時点でもう負け。あとはすっかり秀の市の術中にはまっていくわけだが、まだまだ底が浅い若いあんちゃんでしかない権太郎役に猿之助が見事にはまってた。最後、秀の市に仏壇を買う金をあげるか逡巡し、下座音楽と共に行きつ戻りつ、結局は二朱あげてしまい花道で引っ込む際「あー、何やってんだろオレ」と思いながら走っていく場面、意気がってるあんちゃんの人の良さがよく出ていた。観客が権太郎を大好きになる瞬間。

したたかな秀の市の手のひらの上で転がされる人の良い権太郎の組み合わせが可笑しい。歌舞伎仕込の猿之助と中車の台詞のやりとりは決して噛み合っているとまでは言えないけれど、今のこの二人だからこそ実現可能な、二人が互角に渡り合うことのできる演目でした。面白かった。

ちょいメモ備忘録20150512-05

二、湧昇水鯉滝(わきのぼるみずにこいたき)通し狂言 鯉つかみ
片岡愛之助六役早替り宙乗りならびに本水にて立廻り相勤め申し候

俵藤太秀郷、鯉王皇子金鯉、滝窓志賀之助、滝窓志賀之助実は鯉の精、奴瀬田平、関白中納言橘広継:愛之助/鯉王:中車/篠村女房呉竹:門之助/家老篠村次郎公光:亀鶴/釣家息女小桜姫:壱太郎/信田清晴:弘太郎/三上山の大百足実は平将門の霊:猿弥/堅田刑部:男女蔵/鮒五郎:右近/瀬織津媛:秀太郎

お待ちかねの「鯉つかみ」!一応あらすじをネットで拾い読みしていたのだが、いきなり大百足登場。そして立ち回り。何がなんだか分からない部分もあったが、難しいことは考えずに楽しんだ。

十人+猿弥さんから成る百足がEXILEみたいだったり、琵琶湖が真っ赤にそまり巫女さんたちが倒れ血潮が噴き出していたり、すっぽんから鯉が登場したかと思いきや、そのまま鯉が宙吊りになり、中から愛之助現れて客席を空中浮揚したり、四人のだんまりの最中に愛之助が早替りをしたり、ザッツ・エンターテイメント☆(古)。

でもこれだけ楽しめたのは一人ひとりの役者さんの力によるところが大きい。それぞれのお役を役者さんがきっちり演じ、見応えある所作を披露してくれたからこその舞台。

愛之助、所作の一つ一つが美しく見応えあり。六役も勤めるとクドクなりそうなのに気にならないのは、その伸びやかでしなやかな体の動きの賜物。見得、立ち廻りの型をきっちり見せてくれるから。その体の動きを土台にした役作りあってこその「鯉つかみ」だった。役自体は奴瀬田平の役が一番合っていたように思う。奴といえば松緑のイメージだったのだが、愛之助の軽く弾けるような奴はとても良かった。「ねーい」という返事にも誠意が滲み出る。上方和事仕込だからか、愛之助の台詞に微妙な揺れとリズムがあって、それが心地いいような気がする。志賀之助と鯉の精は、男前で色男。どちらで登場しているのかけっこう混乱したのだが、両方とも和事っぽいかな。俵藤太では荒事を披露。隈取かっこいい。荒事に短足が似合うことを再確認(失礼)。鯉王皇子はまだ父を敬う立場の初々しい若君。皇子という身分のせいか、女形っぽさが漂う。関白中納言は三月の仁左衛門さんの菅丞相にそっくり。低い声は作り物感あり。まあこの役は一瞬しか登場しなかったし。

驚いたのは愛之助が観客を上手い具合にコントロールしていたこと。宙のりで客席真正面に吊り下がった時、微妙なタイミングで花道に登場した時、エンディングで観客が拍手喝采しているとき等、観客の拍手や盛り上がりを制御すべき瞬間があったのだが、その度に上手くいなしていた。こういうのが上手い役者って案外少ないと思う。

ちょいメモ備忘録20150512-07

秀太郎さんの瀬織津媛、勇壮で女性ながら凛々しい。琵琶湖の守神らしく威風堂堂。さすがです。「道明寺」の覚寿とのギャップにちょっと動揺。大百足は猿弥さん、ずいぶん威厳と迫力のある百足だと思ったら、実は平将門の霊と知り、納得。中車は鯉王。歌舞伎の口跡を一生懸命自分のものにしようと一生懸命努力しているのが分かる。鯉王らしい威厳は出ていた。がんばれ!右近の鮒五郎、化粧が「王家の紋章」のメンフィスみたい。俵藤太に退治された百足の事を浄瑠璃に合わせ伝える。無念さ、悔しさを全身で表現。魅せてくれました。門之助さん、篠村女房呉竹。きれいな女房だった。姫のことを任せられるしっかりした気品あるひと。役の幅広さに感心する。

亀鶴は、礼儀正しいご家老篠村。切腹するまで追い詰められたり、見得を切ったりけっこう重要な役柄だが、ちゃんと様になってた。もうちょっと風格があれば完璧。壱太郎の小桜姫、まだ恋に恋しているような一途な姫君。すごろくで遊ぶ幼女のような姫君が、想い人に出会えたとたん奥へ連れ込む単純さは、幼さと表裏一体。壱太郎、赤姫をどんどん極めている。志賀之助を想ってのクドキの場面で一人所作事をする場面では初々しく、その後の志賀之助と二人で逢瀬を楽しむ場面はふうわりとした色気を伴い夢心地。弘太郎の信田清晴、って弘太郎ってこんな顔だっけ。もっと幼いイメージだったのだが、顔はまんじゅうみたいにぷくっとしていて、嫌らしさも醸しだし、姫に嫌われる要素十分。「さっきの奴、嫌な奴、愛之助みたい、いつか倍返しにしてやる(大意)」と言って花道を引っ込んでいって客席大喜び。男女蔵さんの堅田刑部、悪人役で左團次さんよりイイ意味で軽め。声がお父さんにすごく似てきた。猿三郎さんの郷左衛門、澤村國矢さんの粟津晴近も立派だった。そのほかにも澤瀉屋さんで知らない方がたくさん出演されており、層の厚さに感服。

ラスト、大詰の鯉退治の場、楽しかった!まずは愛之助が空中で一回転して琵琶湖(水槽)の中にドボン。最初は水も滴るいい男だったのが、すぐにびしょ濡れ。その後は志賀之助と鯉の水の掛け合いっこ。小学生がプールで遊んでいるように見えなくもない。仕舞いには、客席に愛之助が水をぶっかけているだけみたいになって。一階席5列目くらいまでのお客さんはビニールから舞台を覗こうとうすると水をぶっかけられの繰り返しで大変だったと思うが、馬鹿馬鹿しくて楽しかった。油断してるとまたぶっ掛けてくるんだよね、愛之助。筋書にないが、鯉の役は誰がやっているんだろう。愛之助と鯉役の方に敢闘賞をあげたい。最後は観客がみんな下座音感に合わせ手拍子。大盛り上がりでした。

劇場をでると台風襲来で大雨。鯉つかみでびしょぬれになった方が外でまたびしょぬれになった模様。一度は見たいと思ってた「鯉つかみ」、今回通し狂言で見られてとても嬉しい。充実の夜の部でした。

22:31 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)
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