11月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫01月

九月文楽「面売り」「鎌倉三代記」「伊勢音頭恋寝刃」

2015/09/15
九月国立劇場文楽公演昼の部です。夜の部と異なり、昼の部はバラエティに富む三演目。

「面売り」
文楽を見始めてまだ日が浅いのだが、複数演目を行う場合、最初の演目は前座のような演目を上演するものだと思っていた。だが、今回の「面売り」、前座とはとても言えない立派な舞台。

おしゃべりな案山子(吉田玉佳)は愛嬌がある。面売り娘(吉田勘彌)は天狗、ひょっとこ、おかめと次々と面をかぶり変え、雰囲気がどんどん変わる。竹本三輪大夫さん(面売り)豊竹睦大夫さん(案山子)のおかしものある語りも楽しかった。

「鎌倉三代記」
歌舞伎で見たことがある。魁春が時姫で、梅玉が三浦之助義村、幸四郎が佐々木高綱。あれはあれで面白かったのだが、三浦様が時姫に、「俺のことを好きなら父親を撃て」という展開がどうにも自分勝手に思えてしまい、なんじゃいこのストーリーは、と思ったのを覚えている。

しかし文楽では、「鎌倉三代記」歌舞伎で感じた理不尽さを感じなかった。まず、通しであったこと。また、義太夫の語りと人形の所作によって、時姫と三浦様の逡巡がより丁寧に描かれていたこと。さらに、佐々木高綱が、三浦様の首を撃ち取り時姫の父北条時政に近づくことを約束したことと、三浦様の母が自害し父を撃たねばならない時姫に義理を立てたことが分かりやすかったので、理不尽さが相殺されたように感じた。

全体を通して時姫(豊松清十郎)さんがピカピカしていた。可憐で健気でかわいかった。

「局使者の段」
豊竹希大夫さんの語り、年老いた三浦様の母上と、局や女房たちの声を語り分けようと努力しているのがよくわかる。年季の入った大夫さんたちだと、なぜか語り分けていることを感じなくなり、一人の大夫さんが人形ごとに別人格になるような気がするのだが、希大夫さんはまだそういう感じではなく、ある意味新鮮。

「米洗ひの段」
桐竹紋壽さんの女房おらちが最高でした。お姫育ちで家事が全然できない時姫にヤキモキして、井戸水の酌み方や米の研ぎ方を教えてやるのだが、「肩肌脱いで」って語ったと思ったら、片乳はだけさせて豪快に教えてやる。下町の肝っ玉豪快オッカサン。時姫がすり鉢でする際、女房たちが時姫を団扇で扇いでいるのを見て、「そんな暇あったらすり鉢もってやりなさいっ」と言っても埒が明かないので、自分で足を手前にでーんと投げ出してすりはじめた。かっこいい。

ちょいメモ備忘録201500914-02

「三浦之助母別れの段」
この段は何と言っても竹本津駒大夫さんの語りと鶴澤寛治さんの三味線。津駒大夫さん、いつもながら熱い。こちらも手に汗握る語り。年老いて余命いくばくもない自分の命運を知りつつも、必死で家を守ろうとする母。寛治さんの三味線も哀しみが誘う。人形遣いは桐竹勘壽さん。動きが少なくても母の想いが伝わる。

「高綱物語の段」
最後の段は足立藤三郎、実は佐々木高綱が良かった。吉田玉男さん。足立藤三郎のときは軽薄でいけ好かない、でもなんかしっくり来ないと感じたがそれは仮の姿だから。正体を現したあとは、地位ある武将らしく周囲を圧倒する威厳と立派さ。

こってりした文楽を堪能できる演目でした。

「伊勢音頭恋寝刃」
吉田簑助さんのお紺が本当にきれい。娘としての可愛さ、遊郭の女ならではの色気、惚れた福岡貢のために歯を食いしばっての愛想尽かしをする健気さ、そういうものを全部身にまとっていて美しかった。

桐竹勘十郎さんの万野、勘十郎さんって意地悪な万野を操るとき、ご自身の顔も万野みたいな顔になってしまっている気がする。ちょっとかわいい。吉田和夫さんの福岡貢、お紺に惚れたのに愛想尽かしをされ怒り狂う短気な若者らしさと、青江下坂を手にして気がふれる恐ろしさ。

ちょいメモ備忘録201500914-01

「古市油屋の段」
休演明けの咲大夫さん。今までで一番聞きほれてしまった。燕三さんの凛とした三味線と良い相性。

「奥庭十人斬りの段」
安定の豊竹咲甫大夫さんと野澤錦糸さん。首が飛びまくりだと思ったのに、あんまり飛んでなかった。意外とおとなしめ。カツサンドを食べたせいで睡魔が・・・。

文楽を初めて見た頃は義太夫に注目しがちだったのだが、最近は三味線にも目が行くようになった。この日の三味線、どれも腹と心に響いてずんと来て、聞きごたえあり。

10:28 文楽鑑賞 | コメント(0) | トラックバック(0)
コメント

管理者のみに表示