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九月秀山祭大歌舞伎 「双蝶々曲輪日記 新清水浮無瀬の場」「紅葉狩」「競伊勢物語]

2015/09/26
九月は秀山祭。だけど、結局リピなし観劇になり、ちょっと残念。

ちょいメモ備忘録201500925-01

一、双蝶々曲輪日記 「新清水浮無瀬の場」
南与兵衛:梅玉/藤屋吾妻:芝雀/平岡郷左衛門:松江/太鼓持佐渡七:宗之助/堤藤内:隼人/井筒屋お松:歌女之丞/手代権九郎:松之助/三原有右衛門:錦弥 ※(配役変更)/山崎屋与五郎:錦之助/藤屋都:魁春

南与兵衛と山崎屋与五郎のキャラが対照的。南与兵衛(梅玉)は「ぴんとこな」。一見やさ男風なんだけど、頼りがいと男気がある。立ち廻りもどこか余裕があってかっこいい。山崎屋与五郎(錦之助)は「つっころばし」。前に見た染五郎の与五郎よりも年季が入っている分、なよっとした所作が堂に入っている。吾妻の肩を抱くしなしなっとした腕も優男。

与兵衛の愛人は藤屋都(魁春)。与兵衛相手に恋人モードになるけど、松之助の指を切る大胆さがあり、それを証拠に与兵衛を殺人の罪から逃そうと一計を案じる女性でもある。理知的で頭が切れそう。それに比べて与五郎の愛人吾妻(芝雀)はジェラシーが強い。芝雀さんの女形ってどこかじめっとしている気がする。そういう役が多いのか?

郷左衛門(松江)は恋の鞘当に出てくる典型的な意地悪ライバル。絶対最後は振られるキャラ。両手両腕をプルプル震わせて吾妻に嫉妬するのがちょっとかわいい。手代権九郎(松之助)、かなりのはまり役。都が好きでデレデレ。せこい悪巧みを考えにやけて笑う。嫌な奴だけど憎めない。佐渡七(宗之助)、太鼓持らしい軽さと調子のよい悪賢さ。堤藤内(隼人)、お役人。二枚目をアピールしてたように見えた。松之助を「ひったてぇ!」と命ずる声にもっと張りが欲しい。井筒屋お松(歌女之丞)、遊女たちをまとめるしっかり者。

いろいろもめてたけど、最後の南与兵衛(梅玉)の宙乗りに全部持っていかれた印象。赤茶の傘を手に清水観音の舞台から、ゆうらりと宙を舞う与兵衛。梅玉さん自身が宙乗りを楽しんでそうだ。桜の中の宙乗り、それを優雅に楽しむ梅玉さんにほっこり。

ちょいメモ備忘録201500925-02

二、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)
更科姫実は戸隠山の鬼女:染五郎/局田毎:高麗蔵/侍女野菊:米吉/山神:金太郎/腰元岩橋:吉之助/従者左源太:廣太郎/従者右源太:亀寿/平維茂:松緑

「双蝶々曲輪日記」では桜が舞い、季節感ないなと思ったら、今度はちょっと(かなり)早いけど紅葉。季節感たっぷり。

右に義太夫、真ん中右よりに長唄、左には常磐津で伴奏。それぞれの音曲を同時に聞くことができ嬉しい。歌も三味線も、長唄がやっぱり一番聴き慣れている(笑)。

見所は染五郎の女形でしょう。初見かも。そして染五郎は立役なんだ、と思った。前半の更科姫、眉毛が太くて、赤姫なのに顔も仕草もあまり可愛くない。小林幸子に似て蝶。後半で鬼女に変わるからか?腹に一物あるわけだから、こういう役なのか。踊りはどこかもっさりしているし、扇子も体の一部になっていないので不安定。でも、鬼女の本性を顕した瞬間はとても綺麗だった。

平維茂、松緑の通常運転。やはり松緑の口跡は苦手と思ってみていたが、後半の立ち廻り、動きが良かった。刀を持って右に左に大きく動くときの風格と貫禄。

特筆すべきは染五郎のご子息、山神(金太郎)。勧進帳の太刀持ちで猫背で座っていた子と同一人物とは思えない。四方八方、頭の上まで両手を鳴らすときのキビキビした動き。腰もしっかり入っているし、体の切れもいい。この年でここまで踊れるなんてすごい。観客も拍手喝采。今後がとても楽しみだ。

局田毎(高麗蔵)、染五郎の更科姫との連れ舞い、更科姫よりもきれいだった。黒い衣装と所作が上品。侍女野菊(米吉)はお尻の大きそうな侍女。良いお母さんになれそう。従者右源太(亀寿)、口跡も動きもキビキビ明晰で見ていて気持ちが良い。こういう舞台を締める人が必要と思わせてくれる。亀寿、どんどん従者が似合うようになっている。従者左源太(廣太郎)、よくも悪くも「青年」。腰元岩橋(吉之助)、オカメのようなお化粧。誰だろうと思ったら「播磨屋」の大向こう、吉之助さんでした。平維茂(松緑)にちょっかい出すあたり、踊りがうまいのが分かる。もっと見たかったな。

紅葉が美しく音曲が楽しい。松緑の立ち廻りをもうちょっと見たかった。

三、紀有常生誕一二〇〇年 競伊勢物語(だてくらべいせものがたり)
序幕 奈良街道茶店の場、 同 玉水渕の場
大詰 春日野小由住居の場、同奥座敷の場
紀有常:吉右衛門/絹売豆四郎、在原業平:染五郎/娘信夫、井筒姫:菊之助/絹売お崎:米吉/同お谷:児太郎/旅人倅春太郎:初お目見得:井上公春(桂三長男)/およね:歌女之丞/川島典膳:橘三郎/茶亭五作:桂三/銅羅の鐃八:又五郎/母小由:東蔵

ちょいメモ備忘録201500925-03

「紀有常生誕一二〇〇年」ってなんかすごい。「みちのくのしのぶ文字摺 誰ゆゑに乱れそめにし 我ならなくに」は百人一首の私の十八番。このお話では、このうたから娘を信夫(しのぶ)と名づけたとのこと。

親子の情愛がたっぷり詰まったお話。昨年みた「伊賀越道中双六」の「岡崎」を思い出した。主要出演者もかぶっているし、お母さん役は両方東蔵さん。

紀有常(吉右衛門)、鬘、お化粧ともに老けた印象。若い二人を犠牲にできるだけの紀有常らしい貫禄と威厳がある人が見せる涙が悲しみを誘う。ただ紀有常は、娘信夫(菊之助)の実の父親。でも、3階席の私にはあまり父親が娘を斬る悲しみは伝わってこなかった。第三者が母と娘を他人が引きさく辛さにみえた。ずっと会っていないのだから、設定通りということか。

ちょいメモ備忘録201500925-04

「競伊勢物語」のこってり感は、母小由(東蔵)のたまもの。紀有常(吉右衛門)と再会し、旧知の仲である二人が仲睦まじい語らいをする場面は、この芝居で一番ほっこりする場面。娘が母を罪人にしないよう勘当を仕向ける場面では、普段気立ての良い娘がこれだけひどいことをするのはよっぽどの事と察して、一生懸命なだめてやる優しい母。死を覚悟した娘が琴を引き、それに合わせる砧の音は、何も知らない無心の母の愛情のよう。東蔵さんの背の小さい分、母が哀れに見えた。

娘信夫(菊之助)、良かったなあ。染五郎の女形をみた後なので、ものすごい安定感を覚えた。義太夫との掛け合いも泣く場面で情感がきっちり伝わってきたし、娘らしい所作が光る。

豆四郎(染五郎)は、嫉妬深くて狭量な男。おまけに三種の神器を取り戻すのも、妻が勝手にやったこととは言えど、妻任せ。そんな豆四郎が自害を覚悟していたのは唐突に思えた。でも、骨の髄まで忠義の精神が徹底されている時代のことと考えれば納得できる。

銅羅の鐃八(又五郎)、泳ぎが得意でワイルド。野性味全開だ。声も動きもいつもの又五郎さんよりわざと軽くしているけれど、荒事っぽさもみえ、歌舞伎らしい。川島典膳(橘三郎)、厳しいお役人さん。大勢の手下を引っ張るだけの威厳があり、かっこいい。絹売の児太郎は、米吉と同じ地味な身なりでも、パッと身を引く色気がある。旅人倅春太郎、大谷桂三さんの長男井上公春くんが初お目見得ということで楽しみにしていたのに、序幕で登場したとたんいなくなってしまった。

振り返ると、やはり娘信夫(菊之助)のお琴と母小由(東蔵)の砧を思い出す。二人の別れを暗示する信夫と義太夫の三味線のハーモニー、母小由の砧を打つ無垢な思いに溢れた表情が心に残る。

ちょいメモ備忘録201500925-05

11:27 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)
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