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二月大歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」

2016/02/09
「籠釣瓶花街酔醒」!
歌舞伎を好きになってから、一番見てみたかったお芝居。それも播磨屋さんので。夢がかなった。

ちょいメモ備忘録20160209-12

三世河竹新七 作 籠釣瓶花街酔醒
序幕 吉原仲之町見染の場、二幕目 立花屋見世先の場、大音寺前浪宅の場、三幕目兵庫屋二階遣手部屋の場、同廻し部屋の場、同八ツ橋部屋縁切りの場、大詰 吉原仲之町見染の場

佐野次郎左衛門:吉右衛門/兵庫屋八ツ橋:菊之助/下男治六:又五郎/兵庫屋九重:梅枝/同七越:新悟/同初菊:米吉/遣手お辰:歌女之丞/絹商人丹兵衛:橘三郎/釣鐘権八:彌十郎/立花屋長兵衛:歌六/立花屋女房おきつ:魁春/繁山栄之丞:菊五郎

​序幕「吉原仲之町見染の場」。佐野次郎左衛門が八ツ橋を見染める場。この場、すごくよかった。

開演当初、舞台は真っ暗。パッと明るくなったと思ったら、そこは吉原の町。花魁道中の煌びやかなこと!この世のものと思えない華やかさ。次郎左衛門(吉右衛門)と下男冶六(又五郎)が思わず立ち尽くし浮かれるのももっとも。

そして八ツ橋(菊之助)が見せる笑み。女神のように高貴なのに、男を惑わす魔性も垣間見え、すべてを見通しているようでもあり、無心の幼女のようでもある吸い込まれそうな微笑み。微笑んでいる間は結構長い。八ツ橋は一瞬微笑んだにすぎないのだろうけど、次郎左衛門にはそれだけ長く感じられたということか。雷に打たれたような表情。茫然自失状態となり八ツ橋に心を持っていかれる。この先八ツ橋に翻弄されることが目に見えるようで心配になったところで幕。

ちょいメモ備忘録20160209-14

​二幕目、次郎左衛門が吉原に通いつめる場面。
次郎左衛門、八ツ橋にメロメロになりなっている表情や、商人仲間(橘三郎、吉之助)に八ツ橋のことを自慢する様がなんともかわいい。でもこれって現代で田舎のおっちゃんが上玉のホステスに夢中になるのと何ら変りないのだなあ。最高の花魁を我が物にしてホクホクして、吉原を手に入れた気になっている。八ツ橋の心を手中にしたわけでなく、金にまかせてチヤホヤされている部分が大きいはず。でもそんな次郎左衛門がなぜかかわいくってかわいくって。この場面の次郎左衛門が好きかどうかは、結局は次郎左衛門を演じる役者のキャラが好みかどうかってことなんだと思う。吉右衛門様贔屓の私はもちろんこの場面の次郎左衛門の萌えぶりに萌えなわけで笑。この場面が微笑ましければ微笑ましいほど、後半の悲劇が頭をよぎり恐ろしくもあり。

三幕目、間夫、繁山栄之丞(菊五郎)登場。
菊五郎さん、間夫にみえない。間夫って、自分の女を「俺の女だ」と思い通りにする自分勝手さがあり、且つ、それだけの色気と度量も必要。でも菊五郎さんの間夫は、折り目正しく礼儀をわきまえており、愛想尽かしを強制するような男にはみえない。

そして「八ツ橋部屋縁切りの場」。​八ツ橋が右手に立てた煙管を唯一の支えにしての愛想尽かし。そりゃもう必死の思いで「あんたのことが嫌になった(大意)」と言う表情は痛ましい。かわいそうなのは次郎左衛門。商人仲間に八ツ橋のことを自慢しまくっていたところ、いきなり縁切りされてわけが分からず、八ツ橋の体調を心配したり江戸にいてもいいんだよと言ってあげるのが切ない。本当に縁切りするつもりだと分かった後、身の置き所をなくしてしまい、大きな図体で頭を下げて両手を床につき屈辱に耐える姿。あまりに惨めで、浮かれているときとの落差が大きすぎて、かわいそうでかわいそうで。それでも「そりゃあんまりつれなかろうぜ」と、最後の気力を振り絞って、大人の対応をしつつ言うべきことは言わんとする姿が痛ましくて。

ラスト、「立花屋二階の場」。​大詰め。
次郎左衛門に斬られた八ツ橋、ゆっくりと倒れる瞬間はスローモーションの映像のよう。右手を高く上げ、だんだんエビ反りになり崩れ落ちていく。斬られて徐々に我をなくしていく横顔が美しい。

斬ったあとの次郎左衛門、正気を失った表情、目は座っている。それまでの人の好さそうなキャラと正反対な分だけ恐ろしい。絞り出すような「籠釣瓶は斬れるなあ」の台詞は夢に出てきそう。未だに耳元から離れない。

ちょいメモ備忘録20160209-11

佐野次郎左衛門(吉右衛門)は、吉右衛門の善人ぶりが大好きな私にとって、たまらない役柄。廓を金で手中にしたと思った男がその廓に裏切られ逆上し翻弄されるまでの過程に、強烈な説得力がある。八ツ橋(菊之助)、菊之助の花魁は、多少理知的でありつつ普通の女性らしさも垣間見せており、こういう花魁もいるのではと思わせられる。吉右衛門との相性も良かった。最初の見染が絶品。

繁山栄之丞(菊五郎)は、ニンではないのだな、きっと。立花屋長兵衛(歌六)、おきつ(魁春)とも、ピシッと筋を通しそうな商人夫婦。この二人が仕切る立花屋さん、商売繁盛で儲かりそう。下男治六(又五郎)、又五郎さん、意外に子分肌もうまい。縁切りの場、治六のおかげで佐野次郎左衛門がさらにみじめに見えてくる。釣鐘権八(彌十郎)、金の無心を断られ八ツ橋のことを栄之丞に告げ口する自分中心的な男。兵庫屋九重(梅枝)、縁切後の場面でもっと佐野次郎左衛門に思いを寄せる雰囲気が出るかと思いきや、そうでもなかった。

ちょいメモ備忘録20160209-13

大満足。「籠釣瓶花街酔醒」は、「名月八幡祭」と同様、善人→狂喜の流れ。こういう役は吉右衛門がピカ一。千穐楽にもう一度見たいのだけど、とりあえず見納め。


23:55 鑑賞記録 | コメント(0) | トラックバック(0)
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